
さわやかな朝の顔
テレビ放送には、NHKであっても民放であっても、“朝の顔”とよばれる人たちがいる。いわゆる朝の情報番組の司会者や、コメンテーターのたぐいの人々である。
朝の顔であるからして、クセのない爽やかなキャラクターであることが、絶対の条件であることは言うまでもない。そして、その人選は、テレビ各局も非常に厳しく、慎重におこなっている。
「でもねえ、そこはそれ、やっぱり生身の人間ですから、時々何かやらかす人があとをたたないんですよ」と、教えてくれたのは、某東京キー局の技術職の方であった。
具体的に、誰がどんなことをやらかしたんですか?
「何を楽しそうに聞いてくるんですか(笑)。あるメインキャスターの女優は、前日から深酒をして、ベロンベロンの状態で、スタジオ入りです。もちろんそんなありさまでは、オンエアーなんかできるわけもなく、公式には当人病気のため、しばらくお休みを、いただきますということになりました。しばらくお休みというのは、むろん懲罰です。幸か不幸か、最大手の事務所所属であったため、その程度で済みはしましたが、一つまちがえば、何人かがクビをとばされかねなかった、大失態であったわけですよ」
まあ、あっても不思議ではない話ですね。(自分は)個人的に泥酔をして現場にきて、撮影を反故にしてしまった俳優を何人か知っていますが……。
「ええ、なんですけれど、このぐらいならばまだ可愛いものなんですよ」
……と、いいますと?
「酔っぱらって、仕事にならないというのは、民法はさておき刑事事件ではないわけですよ。ところが、その刑事事件に該当することをやらかしたバカ者がいるんです」
そりゃあ、タダ事ではありませんね。いったい、何をやったんですか?
「強制わいせつ。レイプ未遂です」
そりゃまた、凄いですね。ということは、男のキャスターですね。
「はい、彼はを仮にAとしておきますが。毎日ではなく、曜日限定の日替わりキャスターというものでした。」
どこの局ですか?
「ゆりかもめが走っている近くのところですよ。」
二つあるじゃないですか?
「あっちの方の建物です」
ああ、分かりました。で、具体的に何をやらかしたんですか?
「Aは、すごく人気のある、男性グループのメンバーで、一般的には温厚で後輩思いの人格者といったキャラで通っています。」
芸能人に人格者って、まあ、いないことはないですが……。
ハイキックでカウンターアタックされた朝の顔
「実際にどうかじゃなくって、そういう商品イメージだということですよ。で、その彼が同じグループの後輩たちを引き連れて、都内の高級ガールズバーに行ったんです」
ああ、その店なら大体予想がつきます。ちょっと、特殊なお店ですよね?
「はい。店の女の子たちには、芸能界に籍のあるかわいい子たちが多くいるところで、経営者も芸能関連のビジネスをしている人です。当然のごとく、有名な芸能関係者たちが、客として訪れています」
いわゆる、業界御用達というところですね。
「ええ。でね、Aたちがかなり盛り上がったときだったそうなんですが、店の女の子のひとりが、モデルをやっているハーフの子なんですが、電話をかけに建物の階段まで出て行ったんです。すると、人格者といわれているはずのAが、トイレに行くふりをして彼女の後をつけていき、電話が終わったとたんに、彼女に襲い掛かったんです。」
それは、業界的なノリの軽さではないということですよね?
「もちろん。抱きついた後、無理やりキスをして、そのまま床に押し倒そうとしたらしいんです」
完全に強姦の意志があったというわけですか。
「ええ。でねぇ、この件が普通じゃないのは、その後の展開なんですよ。その女の子ね。キックボクシングを習っていたんです。なんで、Aに押し倒されそうになったとき、そのまま、Aをぶん殴って、ひるんだところにハイキックをくらわしたんです。」
やりますねぇ!
「でまあ、Aが膝をついたところで、騒ぎを聞いた店の人たちが集まってきて、この彼女は事なきを得たんですが、もうちょっとで警察に通報されるところだったようです」
そりゃまあ、そうでしょう。通報されなかったのは、やっぱり芸能系のお店だったからなんですね?
「さっき、芸能関係者が経営する店って言いましたが、正しくは、芸能ヤクザ系なんですよ」
それは、一般的にはマズいけれど、芸能人にとってはラッキーですね。Aの事務所は、バックにいる宗教団体の力もあって、そちら方面には強いですからねえ。
「全くです。ただねえ、Aはそのときの反撃で顔がハレてしまい、テレビに出るのは無理な状態になり、その週の出演は休まされてしまいました」
局側としては、はらわたが煮えくり返るというか、肝を冷やしたというか。まあ、両方でしようが。スポンサーの耳に入っていたら、局の方も何人かクビが飛ぶような、大不祥事ですよね。
「ただ、Aにしたら、警察うんぬんよりも、自分の会社の総帥であるところの、社長に知られなかったのがなによりだったんじゃないですかねぇ。あそこの社長は超キビしいですから」
なにせ、自分のとこの社員やアーティストを一族って呼んでいるぐらいですからね。
「Aは、その後も、朝の顏をつづけて、好評のまま契約期間を全うして番組を何事もなかったように卒業しています。店と女の子には、随分と丁寧に謝罪がされたと聞いていますが、この事件後にから彼自身も彼の後輩たちも店には出入り禁止になってしまいました。当たり前の話ではありますが」
この手の話は、これだけではないようなのだが、どこまで行っても生身の人間がテレビに出演しているかぎり、また何かしらのトラブルはおこるであろう。
(ヴァールハイト及部 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©Khusen Rustamov PIXABAY
【著者紹介:ヴァールハイト及部 1968年 横浜市出身 大学卒業後サラリーマン生活を経て、フリーランスとして、映画・ショービジネス界で仕事をしている。芸能界ウォッチーでもある。】