無言電話(前編)

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これは大阪在住のすみさんという女性の体験談である。

すみさんは幼い頃から霊が見えており、霊に限らず奇妙な出来事が多いと話す。

「これまでは人に話そうと思わなかったのですが、今年五十一歳の誕生日を迎えたことと、娘たちの後押しもあって、不思議な話を誰かに聞いてもらおうと思って」

すみさんの体験はどれも興味深いものだが、中でも印象深かった話をひとつ紹介する。

五年前の初夏のことだった。すみさんが仕事を終えて帰宅すると、固定電話が鳴った。慌てて電話を取る。

「はーい、もしもし?」
「…………………」

電話の相手の声は聞こえない。ただ、サー……という環境音だけが耳に届いた。

「もしもーし。どなた?」
「…………………」

確かに誰かと繋がっているのに、意図的に通話相手が黙っている。

「すみません、聞こえないみたい。失礼しますね」




(間違い電話だったのかな?)受話器を置いたすみさんは、夕飯の支度を始めた。

この無言電話が、すべての始まりだった。翌日も、また翌日も、すみさんが帰宅すると電話が鳴るようになった。

はじめのうちは電話に出ていたが、相変わらず相手は無言だ。着信履歴を見るが、家族が在宅していない時間には電話は鳴っていない。

(まるで、誰かに監視されてるみたい……気持ち悪い)すみさんは次第に電話を取らなくなっていった。

そんなある日、すみさんの外出中、携帯電話に非通知の着信があった。

(非通知の電話……?)不審に思いながら電話に出ると、男性の声がした。

「ご主人に出張を頼みたいのですが、電話番号を教えていただけますか」

すみさんは夫の仕事に一切関与しておらず、これまでに出張の依頼電話が来たことなど一度もない。知人ならまだしも、相手は名乗りもせず、全く知らない男性のようだった。すみさんは毅然とした態度でこう言い返した。

「主人の電話番号は教えられません。会社に直接連絡してください」

すると電話の相手は黙ったかと思うと、低い声でこう呟き始めた。

 呪 わ れ ろ ……
呪 わ れ ろ ………

「いいかげんにさらせよ!!」

すみさんが声を荒げたところで電話が切れた。




(誰なの……?家にかかってくる電話と同じ人……?)すみさんは得体のしれない電話の主を恐ろしく思い、警察にも相談したという。

自宅への無言電話が続くある日、夕食中にはこんなことがあった。すみさんが家族と夕食を囲みながらテレビを見ていると、夫が不自然に俯いていた。

「あれ、パパどうしたの?」

すみさんが問いかけると、ゆっくりと顔が上がる。見ると、目つきが明らかに普段と違っていた。そして、妙なことを口にしたのである。

「バイト掛け持ちして三十万しか……」
「パパ、何言ってるの……?」

看護師をしている長女が部屋に連れて行って寝かせたところ、夫は長女の身体をまさぐるようにして触り始めた。

「欲求不満や」
「ちょっとパパ!?何してるの!?」

すみさんが止めようとしたところ、夫は急に胸を抑えて苦しみだした。

「お父さん、大丈夫!?心臓マッサージするね」

長女が父の心臓マッサージを始めたところ、夫はカッと目を見開くと、にやりと笑ってみせた。

「へへへ騙されたか」

明らかに普段の夫と違う様子に、すみさんは戸惑いを覚えた。

(パパ、どうしちゃったの…)翌日、夫に尋ねると、昨晩のことは何も覚えていないという。

丁度その頃、知人の霊能者Aからメールが入っていた。自ら連絡をしなくても、Aからメールが入ることは珍しくなかったが、そこに並んでいた文字にすみさんは驚いた。

“呪いを告げる電話はありましたか?”

(呪い……?)

思い当たる電話といえば例の無言電話しかない。ただ、すみさんは無言電話が掛かってきているとは言わず、以下の内容を端的に送り返した。

“主人がおかしなことを言い出すことがあります”

すると、Aの返信には驚くべき内容が記されていた。

“複数の呪い屋を使われているようです”

(えっ!?呪い屋……!?)【後編に続く】

(志月かなで 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

【志月かなで】
HP:http://shizukikanade.com/
Twitter:@kwaidangirl

 

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