ある男性の存在が周囲の機器を狂わすのか…

投稿 ゲリー板橋さん

「機械に憑かれた男」

山口敏太郎様、愛夢様、お便りを読んで頂き、ありがとうございます。また、スタッフの皆様もありがとうございます。

ゲリー板橋でございます。警備会社時代の話を送らせて頂きます。このお話に、心霊現象は起きません。このお話は怪談ではなく奇譚(きたん)です。

13 年前、私は東証一部に上場する精密機器を製造する某企業の技術と営業部門の本部ビルで施設、保安警備の業務に就いていました。

Oさんから、Gホテルの話を聞いた8月のある日、Mさんという50歳代半ばの壮年の方が、研修に来ました。

彼は交通、雑踏警備を希望して入社したのですが、希望する職務の部隊の人数上の受け入れの調整の関係で、施設警備の私の所属する隊に一週間程の予定で配属されたのです。私の隊は24時間勤務でしたが、彼は研修の為、日勤でした。

元国鉄、JRマンで、車両部に所属していた彼は、小柄ながら筋肉質な体型で日焼けし、しわが刻まれた顔、短く借り上げられた髪型はいかにも職人という風貌でしたが、気さくでよく話し、プロレスネタ、昭和ネタで我々を笑わせ、和ませてくれました。

1日目は私もMさんと勤務しましたが、何事も起きず無事に終わりました。ここで、ちょっと警備の勤務の話をいれますと、勤務につく事を上番(じょうばん)、勤務を終了する事を下番(かばん)と言います。因みにお休みは、非番(ひばん)です。

異変は私が下番した2日から起きました。




当時、私が警備についていたその企業のビルは最新のセキュリティシステムで、今ならば当たり前になっていますが、個人のID情報を記録したカードでしか入退室できないようになっていました。そのセキュリティカードの、カードリーダーのパネル部分に、エラー表示が頻発したとの事でした。 

カードの接触が甘いとエラーは起きるので、エラー表示は珍しくはないのですが、カードをあてていないのにエラー表示が出たり、誰も入退室していない部屋のカードリーダーのパネル部分にもエラー表示が出たというのです。

上番し、引き継ぎを受けた後、私の所属する隊の隊長とその日に任務につきました。隊と言っても交代要員を含めた5名体制、一勤務、2名体制の小さな隊です。

隊長は、私に、「入退室に支障が起きないように、セキュリティシステム部門や関係部署と連絡をとるように」と指示を出しました。

すると、研修で来ていたMさんは暗く沈んだ表情で、「やはり私のせいですね」と呟きました。

私と隊長は、「これは、システムのエラーで、Mさんには関係ないよ」と言いましたが、Mさんは、「いやいや、これは私が原因ですよ。私は機械を狂わすんですよ」と言うのです。

彼は国鉄からJRした頃から、彼が業務に携わると機械類の故障がよく起きるようになったそうです。それが理由なのか、車両部から畑違いの事務関連の部署に移動になったそうです。

移動後も、パソコンがダウンしたり、空調機器にエラーが出たり、機器関連のトラブルが続いたそうです。理不尽な話ですが、原因はMさんの責任になり、事業所を転々と移動になった後、JRを退職したといいます。

警備業界に転職した後も、施設警備につくと機械類、機器関連のトラブルが頻発したそうです。ついには機器関連の扱いのない、交通や雑踏警備の仕事を続けてきて、私が所属する警備会社に転職してきましたといいます。

隊長は、「考えすぎやで。機器類にトラブルはつきもんや。研修でここに来とるだけやから、気にしたらアカン」と励ましました。私はセキュリティシステムの本部にも連絡して、サーバーに異常がないか確認しましたが、『サーバーには異常なし、システムにも異常なし、エラーの記録も残っていない』の答えがかえってきました。

とはいえ、念のため、技師を派遣してもらう事にしました。

午前の巡回はMさんの担当です。ビルは8階建てで、屋上から順次、下に降りながら各フロアーを巡回します。

普段は使用していない、会議室だけのフロアーからMさんから、無線が入りました。『誰も使用していないのに、数室ある会議室のカードリーダーのパネル部分からエラー表示がでている。板橋さん、一緒に確認して頂けませんか?』との内容でした。

現場に向かうと、確かに使用していない各会議室のカードリーダーパネルに、全てが異常を示すエラー表示が点滅していました。私とMさんは無線で、隊長に入室し確認する事を報告、マスターキーをドアのノブの鍵口に差し込もうとした瞬間にエラー表示は消えました。

入室しましたが、同然、誰もいません。Mさんはすっかり黙りこんでしまいました。

午後になり、技師が二名、点検に来ました。各フロアーを本部のサーバーを確認しながら点検してくれましたが、全て異常なし、の結果でした。私は午前中のエラーの件を話しましたが、おかしいですね、と首をひねっていましたが、次にまた同じ事が起きれば、1日、常駐してくれる事になりました。

私は、Mさんに、「これで大丈夫ですよ」と伝えましたが、Mさんは、「原因は私です」と言い張ると、暗い顔でその日の勤務を終えて下番しました。

私の勤務する、そのビルは技術の本部ビルでもありましたので、技術者が絶えず出入りし、朝まで作業する事も普通で、いつも遅くまで大勢の社員さん達が館内にいるのですが、その日は平日の夜とは思えない程、閑散として、20時頃には館内には社員さん達は誰もいなくなりました。

私と隊長は特に念入りに各フロアーの部屋を巡回、点検しました。

私の隊は24時間勤務だと書きましたが、一応、交代で4時間ほど、早番、遅番とわかれて仮眠をとります。そして、その夜は私が早番でした。

宿直室で仮眠をとります。何時もは直ぐに眠りに落ちるのですが、その夜はなかなか寝付けませんでした。少し、うとうとしていると、「悪いが起きてくれるか?」と隊長がドアをドンドンと叩いています。

ドアを開けると、隊長が緊張した顔で、「またエラーが出とる。一緒に確認してくれるか?」と頼まれました。そして、私と隊長はエレベーターに乗り、問題のエラーが起きているフロアーに降りました。

通路の電気は既に灯されていて、奥の方から細い笛の音のような、アラート音が響いています。エラー表示が出ている部屋は更衣室で、当然、中には誰もいませんし、もし誰かが部屋の中にいたり、入室すれば設置してある対人センサーが反応しますが、隊長は「センサーの反応はない」と言いました。

カードリーダーのパネルに赤く点滅する、“エラー~Error ”の文字も、笛の音のようなアラート音も、薄気味悪く感じられました。




「隊長、どうしますか?」

隊長は、「入室する、援護してくれるか」と応えました。あり得ない事ですが、何者かが何処かに隠れていて、入室した可能性も捨てきれません。薄気味悪い空気は一気に緊張へと変わりました。

私は、装備として支給されている、特殊警棒のホルダーのホックを外して、警棒の柄に右手を添えました。

隊長がマスターキーをドアのノブの鍵口に入れようとした瞬間、またしてもエラー表示の点滅は消えて、アラート音も止みました。隊長はそのまま、鍵口に鍵を差し込み、ドアを開けて、壁の電気のスイッチを入れました。

中には誰もいません。

使用しているロッカーは施錠されています。使用者のいないロッカーは施錠されていせんが、中を確認しましたが誰も隠れていません。

誰もいるはずがないのです。

私と隊長は、顔を見合せました。また、なにやら薄気味の悪い空気につつまれました。私は、隊長に「Mさんの、機械を狂わすって、本当なのでは?」と言いましたが、隊長は何も答えず、しらじしく灯る蛍光灯を見ていました。

よく朝、本部から、急遽、『Mさんが希望していた部隊の枠の調整が出来たので、そちらで研修を行い配置するために、そちらにはもう行かない』と連絡がありました。

すると、その日から2日間に渡って頻発していた、原因不明のセキュリティカードリーダーパネルのエラーは、プッツリと起きなくなりました。Mさんが、来て、始まった異変は彼が去り、起きなくなったのです。

本当にMさんは、機械や機器類を狂わす力があるのでしょうか?山口敏太郎様はどうお考えになられるでしょうか?

この事件から、1ヶ月後、私は非番でしたが、Mさんが配属されている部隊の大型商業施設の警備に応援に行きました。Mさんは広域、と言って施設周辺の車の誘導、お客様の誘導にあたり、汗を流しながら、生き生きと任務に就いていました。

私は久しぶりに彼と話しましたが、あの更衣室の件は話ませんでした。もうどうでもよい事ですから。

私は、ふと思ったのですが、Mさんは、機械を狂わすのではなく、機械に憑かれているのではないか?そんな事はあり得ないとしても、そう考えてしまいます。

ある日、突然に自分の周りで機械、機器類が狂いだし、自分の人生も狂い出す。気の毒で仕方がありません。

救いは、太陽の下で汗を流しながら、生き生きと働くMさんの姿です。今、彼はどうしているのか?機械から解放されたのでしょうか?

また長々と怪談でもないのにお話をして申し訳ありません。私もアトラスラジオと山口敏太郎様と愛夢さんの掛け合いを楽しみにしております。

また、投稿いたします。

(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©photoB photoAC

 

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