新自由主義とベーシックインカムの罠

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先月、竹中平蔵氏が「国民全員に、月七万円のベーシックインカムを配布し、生活保護や年金を廃止すればいい」と発言し、賛否を巻き起こしたのは記憶に新しい。

竹中氏は小渕・森・小泉政権で政策に携わり、その後も政権に、一定の影響力を持ち続けている。特に小泉政権において、非正規雇用の拡大に尽力したことで、格差を拡大した張本人のように言われている、強力な新自由主義者(小さな政府を志向し、市場のことは市場に任せるべきであるという主義)である。

現在日本は、莫大な財政赤字を抱え、財政破綻の瀬戸際にあると言われている。ただし日本の債務は、外国から借り入れたものではないので、財政赤字が膨らんでも破綻はしない、との意見もあるが、今は事の真偽は置こう。少なくとも竹中氏は、この前提に基づいて、財政健全化のために必要な社会保障の削減の一案として、この発言を行ったと思われた。しかし、氏が信奉するところの新自由主義の牙城であるアメリカの現状を見ると、氏の真の狙いがはっきりしてくる。


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アメリカの生活保護制度は、日本のそれとかなり異なるし、州ごとの違いも大きいので、単純に言うのは難しいのだが、その一つにフードスタンプという制度がある。低所得者向けに、食費を補助するための制度で、これを利用して食品を購入することができるのだが、ウォルマートやAmazonなど、いくつかの大企業において、この制度を悪用している疑惑が持たれている。

具体的には、フードスタンプ受給者を、最低賃金未満で働かせている疑惑だ。政府の貧困対策を悪用して、人件費の削減を図っているとすれば、これは悪徳企業と言わざるを得ない。


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さらに、疑惑ではなく、アメリカには実際に最低賃金以下で働かされている人々が大勢いる。刑務所の囚人達である。アメリカでは刑務所の民営化が進んでおり、刑務所は採算を取るため、受刑者を極端に低い賃金、あるいは無賃金で働かせ、差額を収益として得ている。

この受験者による労働は、アメリカの労働市場において、すでに無視できない規模に達しており、そのために刑務所が受刑者の刑期を不当に延長したり、司法と癒着して、受刑者を必要以上に増やしている疑惑が持たれている。


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これらをひとまとめにして考えると、新自由主義者は、政府に労働者の生活を保障させ(民営刑務所にも政府からの補助金は出ている)、労働者を(できれば)無償で働かせようとしている、そう考えるのは、あながち邪推とは言えないだろう。




そうなると竹中氏の発言の真意も見えてくる。

「政府に国民の生活を保障させて、国民全員をタダ同然で使える派遣労働者にしたい」

竹中氏が、派遣最大手のパソナの会長であることも考え合わせると、これが竹中氏の本音なのではないだろうか。

こう書いて行くと、ベーシックインカムという制度そのものが、新自由主義の考え出した搾取のための道具に思えてくるが、本来のベーシックインカムはそうではないことを付け足しておきたい。


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ベーシックインカムというアイディアは十六世紀のイギリスに遡るが、もっと遡れば、市民に小麦を支給したローマ帝国にその起源を見出すこともできる。近代的ベーシックインカムは、国民全員に一定額を支給し、政府をスリム化しようというアイデアである。

例えば現在の生活保護では、1%も存在しない不正受給者を追及するために、多くの人員と予算が投入されているが、ベーシックインカムが導入されれば、この無駄を省くことができる。また、産業における機械化の進行と、AIの進化によって、近い将来、大勢の失業者が出ることが危惧されている。ベーシックインカムは、この問題に対する解決策としても注目されている。

ベーシックインカムを実施するにあたって、大きな問題となるのが「金額をいくらにするか」と「財源をどうするか」である。


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例えばアラスカ州では、すでに年千四百ドルのベーシックインカムが導入されているが、その財源は石油である。年金等のシステムの廃止は行われていないので、政府のスリム化には寄与していないが、貧困対策として大きな成果を上げている。

また、各国で実験的に行われたベーシックインカムの研究によれば、「ベーシックインカムによって労働意欲が阻害される傾向は見られない」との結果が出ている。

竹中氏の主張するベーシックインカムが実現すれば、大勢の国民がパソナをはじめとする派遣会社によって、最低賃金以下で働かされることになるばかりでなく、大勢の生活保護受給者や年金生活者が、死の危険にさらされる。これは、富裕層による貧困層に対する搾取以外の何者でもない。

保守かリベラルかを問わず、日本の未来を憂えるならば、現在も進行している、富裕層による貧困層に対する搾取を見過ごしてはならないのではなかろうか。

(すぎたとおる ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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