通電実験で石から発生した虫!?アンドリュー・クロスの「ダニ」

果たして、地球の生命体はどこから生まれたのか・・・。この原理は未だに生物学的に大きな謎として存在している研究テーマである。

生まれて間もない地球に、隕石の落下や雷、海底に生じた熱水などの様々な変動が起き、そのエネルギーによって化学反応が起きて有機物が作られ、長い時間をかけて単細胞生物が発生。そこから様々な生物へ至る多細胞生物が発生するまでは、地球が出来てから実に30億年もの時間がかかったと考えられている。

ユーリー-ミラーの実験が有名であるが、理論上では古代の海を再現した環境を擬似的に作り出してやれば、生命の元となる成分が発生することになる。実際、実験では数種のアミノ酸や核酸など、生命の構成要素にもなりうる有機物の発生が多数確認されている。




このような実験は昔から行われてきており、「生命はどこからくるのか?」「何も無いところから生命が発生する事は有り得るのか?」という命題に多くの学者が向き合ってきた。ところが1836年のこと、ある人物が化学実験中に何も無いところから小さな生命体を「生み出す」事に成功した、と発表して注目を集める事となった。

その人物はアンドリュー・クロスといい、イングランドの科学者で、普段は団地の管理を行っていたという。彼は電気に関する研究を行っていて、この時も電気を用いた人工ガラスの結晶を生成する実験をしていたという。

彼は燬焼 (きしょう) フリントと炭酸カリウムでつくったガラスを、塩酸で溶かした液体に入れて電気を流して変化を記録していた。すると、実験開始から14日目に石に微細な突起物が複数付いている事を確認。その後、突起物は次第に大きく「成長」し、なんと26日目には足が生えて動き出したのである。その生物を採取して顕微鏡で調べてみたところ、ダニそっくりの生物だという事が判明した。

もしかすると、実験器具や材料の中にダニの卵などが混じっていた可能性を考慮し、クロスは細心の注意を払って再度実験を行った。すると、またしても通電された石の上にダニが発生したのである。

その後、彼はこの実験結果をレポートにまとめて学会に送付、当然ながら物議を醸すこととなった。そこで、建築家であるウィリアム・ヘンリー・ウィークス氏がクロスの実験の追試を行った。果たせるかな、彼の実験でもクロスの実験同様にダニの発生が確認されてしまったのである。ただし、同様に追試を行った科学者は他にもいたが、全員が全員再現に成功した訳ではなかったという。

この虫は「Acarus Crossii(アカルス・クロッシー)」と名付けられた。

だが、クロス本人は本当にこの虫が何も無いところから電気によって発生したとは考えていなかった。自分が実験に使用したサンプルに卵が付着していたか、器具がダニに汚染されていたと考えていたようだ。




実際、確認されたダニはコナダニに酷似したものだったという。しかし、「何も無いところから電気によって生命が生み出された」という実験結果が非常に興味深いものだったため、当時のメディアが面白半分に取り上げた結果、誇張した内容が現代まで語り継がれる結果となってしまったようだ。

一説には「ファラデーの法則」で有名なマイケル・ファラデーもこの実験の追試を行って成功させた、と言われているが、これも一部マスコミが書き立てた飛ばし記事であり、本人は実験すら行っていなかった事がのちに判明している。

また、この実験が「電気で人造生命体に命を与える」メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」のアイデア元になった、という説もあるが、これは実験の方が小説が出版されるよりも20年後の事なので、まったく関係はないようだ。

なお、クロス氏はこの実験ばかりが有名になってしまい、現代ではどこかマッドサイエンティストのように受け取られているふしがあるが、本人はボルタ電池の改良や電気の植生に与える影響など、様々な研究結果と功績を残している人物でもあることを付け加えておきたい。

(勝木孝之 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©ウィキペディアより引用

 

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