心霊スポットの裏側に【後編】

(前編よりつづく)

“Bの駐車場には、夜中に中年の女の幽霊が出る……”

地元の大きなショッピングモールであるBには、食料品スーパーやフードコート、別棟には衣料品やホームセンターがあり、駐車場も広く設けられている。

噂の出どころは、夜分に駐車場にたむろしている暴走族だった。そこから地元のヤンキーに広まったのだ。

「ねえ、N子!行って見ようよ、その駐車場!」

普段からN子さんを連れまわしていた友人にそう誘われたとき、N子さんは激怒した。

「半分焼けただれたおばさんの幽霊なんか、あたしは会いたくない!行きたければあんたたちで行けば。もし行くなら絶交する!!」

「な、なんでそんなに怒るのよ」

普段と違った様子のN子さんに委縮したのか、元来憶病な性格の友人も駐車場に行くことは無かったという。




「――それから、閉店後の時間にその駐車場には行ってない。なんでかはもうわかるでしょ?」

N子さんはRさんに問いかける。言うまでもなく、そのショッピングモールの駐車場は、Yさんの母が亡くなった場所だった。

「噂では気持ち悪い中年の女の幽霊が出るってだけだった。焼けただれたおばさんの幽霊ってのは、あたしが思ったことにすぎないよ。勿論、Yにはこの噂のことは話してない」

「そんなことが……」

知人の知られざる話を耳にして言葉を失ったRさんに、N子さんはさらに衝撃的な話を続けた。

「実は……Y姉妹は、お母さんは殺されたって言ってるんだ。実際に若い男と関係があったのは本当の事なんだけど、心中する理由がないんだって」

Yさんの姉曰く、Yさんの母が不倫をしていたのは事実だが、旦那が心臓病とその合併症で性的不能になったことが不倫の原因だという。まだ三十代だったYさんの母は、肉体を持て余していたのだろう。

当時高校にあがっていた娘であるYさんの姉にも、その話をしていたらしい。欲を満たす相手はいるが、家庭を壊す気はないのだと。

「娘に話すくらいなんだから、火遊びの相手だったはずなんだ。本当に火をつけて死ぬなんて悪い冗談みたいなこと、するはずないって。それに……」

言葉を選ぶような沈黙の後に、N子さんはポツリと言った。

「両方の死体に、首に紐状のモノで絞められた跡があったんだよ」

「えっ!?それって……本当に焼死だったのか!?生活反応はなかったの?」

「そんな難しい事は知らないよ、Yが教えてくれたのはそれだけ。だからあれは自殺じゃないと思うとしか言わなかった」

それだけ妙なことがあったにもかかわらず、警察は自殺で片づけた。マスコミは焼身自殺の無理心中だと吹聴した。もし、Yの言うことが事実なら、Yの母が何か訴えたくて出て来たとしても不思議ではない。




「あたしはそんな状態のおばさんには会いたくない。会っても何も出来ないじゃない。だから、そこには近づかないと決めた。もしY姉妹がそれを知れば現場に行っただろうけど、やっと自分で生きられるようになった彼女たちが、それ以上につらいことを背負うことはないでしょう?」

N子さんはRさんを見て続ける。

「これが、あたしが心霊スポットに二度と行かなくなった理由」

(霊が出る場所には何かしらの因縁があって、関係する家族や子孫がいる……。少し考えたら分かることだったのに……)

Rさんは、N子さんの話を通して実感したという。そしてN子さん最後にこう言った。

「あんたが趣味で怖い話を語るのも、最初はいやだったよ。でもあんたは心霊スポットには行かないだろ?霊体験をしていても、必要以上におどろおどろしい話にしたりもしない。それにあんた、幽霊が好きだべ?うまく言えないけど、昔の恋人の話をするように大切に話すから、それならいいんじゃないかって思ったんだ。今まであたしも色んな体験をしてきたけど、この話は誰にも話したことがなかった。でも、あんたに託そうって思えたよ」

(俺は別に、幽霊が好きなわけではないけど……。確かに誰かを怖がらせたり、脅したりするために語ったことはないな)

Rさんは怪談を語る際、亡くなった方への敬意を忘れたことはないという。

(自分の身内だとはいえ、それが伝わったなら、今まで不思議な体験を語り続けて来て本当によかった)

そう思える、貴重な体験だったそうだ。

Rさんは筆者にこう語ってくれた。

「心霊スポットと呼ばれる場所に本当に霊がいるのであれば、それは妻が言う通り、生前は誰かの家族だったり、関係者だったりした人です。僕らは普段平和に過ごしているから、そんな当たり前のことに気づけないでいます。だからこそ、そうだと気づいた人間がそれを伝えるのも必要なことかもしれないと思って、お話させていただきました」

筆者はN子さんの体験を、Rさんを通して託されたに過ぎない。だが、自身も怪談を語る身として忘れたくない話だと思い、この場に記す。

(志月かなで 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©halfrain

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