心霊スポットの裏側に【前編】

愛知県在住の男性・RさんにはN子さんという妻がいる。N子さんは「あけみちゃん」という怪談の体験者でもある。

そんなRさんは、最近、N子さんからこんな問いかけを受けたという。

「最近また、怪談やってるんでしょ?」

Rさんは十年近く怪談を語ることから離れていたが、最近になってまた語り始めていた。そして、妻であるN子さんはそれに気づいていた。Rさんは自分が怪談を語ることを妻が快く思っていないことを感じ取っていたため、遠慮がちに答えた。

「いつまでやるかは分からないけどね。俺は飽きっぽいから」

「やりたい事はやれる内にやっていた方がいいさ」

N子さんが、珍しく怪談を語ることについて肯定的な事を言ったため、Rさんは驚いた。




それを見て、N子さんはにやりと笑う。

「でも相変わらずあたしのこと、元ヤンとか、心霊スポットに行きまくっていた馬鹿みたいに言ってるんでしょう?」

実際にRさんはN子さんの体験を話すこともあり、話の中ではそう表現していたため、苦笑いをするしかなかった。バツが悪そうに黙っているRさんに、どうせ図星なのだろうとあきれながら、N子さんが続ける。

「あたしが心霊スポットによく行ってたのはずっと昔、二十歳頃の話だってば。もともと、行きたくて行ってたわけじゃない。あんたと同じで、あたしも見えたり感じたりするから、便利な妖怪アンテナみたいに連れて行かれただけ。あんたにも経験あるでしょう?」

確かに、Rさんも厭々連れて行かれることは多かった。

「あたしが心霊スポットに行くのを絶対に断るようになったきっかけ、……聞きたい?」

(確かに、心霊スポットに行かなくなった理由は気になる……)

気にはなるが、聞いていいのかと逡巡していると、

「あんた、聴きたいって顔してる」

妻には隠し事が出来なかった。N子さんは続ける。

「Yって覚えてる?」

「ああ、Aの小さいときからの友人だろ?前に茨城に行ったときに一緒にご飯を食べた」

N子さんは茨城からRさんの住む愛知県に嫁いで来ており、Yさんとは里帰りの際に会ったことがあった。

「あたしとあの子、小学校の時、いじめられてたんだよ。先にいじめられたのはあたしだったんだけど、長くいじめられたのはYのほうで……」

N子さんは昔のことを思い出すようにして、静かに語り始めた。

N子さんは小学生の頃、親戚の家に預けられては実家に戻りと家庭の事情に振り回されていたという。おそらく同級生の親がN子さんの家庭のことを揶揄して子どもに吹き込んでいたのだろう、気づけばN子さんはいじめられるようになっていた。

(でも、Yだけは変わらずに仲良くしてくれる……)

N子さんは入学した時からずっと態度を変えずにいてくれるYさんに心から感謝していた。Yさんの両親も姉もN子さんに優しくしてくれており、よく家に遊びに出かけていたという。

小学校四年生になった時、今度はYがいじめられるようになった。Yの母親が死んだことがきっかけだった。ただ親が亡くなっただけならば同情されるところで、いじめにあうはずはない。原因は、母親の亡くなった理由にあった。




Yの母親は若い男と不倫の果てに、車の中で灯油を撒いて無理心中をはかり、焼死したのだ。

地方ではセンセーショナルな出来事で、テレビの取材で当時有名だったタレントも現場を訪れた。昼間から住宅街を歩いては誰彼かまわずインタビューをしているような状況だったという。Yの家は悪い意味で有名になり、周りからは冷たい目が注がれた。

母を失っただけでなく、周りにも虐められる二重苦のさなかにある友人の姿を見て、N子さんはこう思った。

(親は親で、子どもは何もしてないのに……)

N子さん自身も大人の都合で振り回されていたからこそ、Yさんの気持ちが痛いほどわかったという。だからこそN子さんは、これまで通りにYさんといることを選んだ。その頃にはN子さんへのいじめの理由は「自分の親のこと」ではなく、「Yさんと一緒に居ること」に変わっていた。

中学にあがってもYさんへのいじめは止まることがないままだった。そして中学校二年生の時、もともと病気がちだったYさんの父親が亡くなった。周りからの目や陰口も、死期を早めた一因だったのだろう。

Yさん姉妹は父の死をきっかけに別の町へと引っ越したという。知り合いからのアドバイスを受け、両親の入っていた保険からおりたお金で、アパートを建てたのだ。

そのうちひとつを自分たちの住居とし、残りの部屋を賃貸に貸し出すことで、家賃収入で生計を立てて暮らした。Yさん姉妹の判断は正しく、少しばかりアルバイトをすれば問題なく学校へも通うことが出来たそうだ。

数年後、YさんとN子さんは免許を取得したことをきっかけに、時間が合えば昔のように頻繁に遊ぶようになったという。ターゲットが居なくなったことで、Yさん姉妹への誹謗中傷や噂話も次第に収まり、その後は耳に入ることも無くなっていた。

だがそんなある日のこと、ひとつの噂がN子さんの耳に入った。

“Bの駐車場には、夜中に中年の女の幽霊が出る……”(後編に続く)

(志月かなで 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

【志月かなで】
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画像©jasonbolonski

 

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