画像©Tuna Ölger PIXABAY

これは元自衛官のKさんの体験談である。

Kさんの自衛隊在隊中のエピソードについては以前配信している『自衛隊にまつわる怪談話』を参照されたい。

今回は、Kさんが二十年ほど前に体験した不思議な話を紹介する。

Kさん家族は仲が良く、頻繁に家族旅行に出かけていたという。ある年、Kさんが家族と一緒に長野のオルゴール館に行った帰りにこんなことがあった。

“――……♪ ……♪”

車の中で、オルゴールの音が聞こえたのだ。お土産にオルゴールを買っていたわけでもなく、車のスピーカーから聞こえたものでもなかった。

(おかしい……俺以外の誰にも聞こえてないのか……?)

Kさんはふと、昨日の夜、自分の彼女であるAさんとオカルト話をしていたことを思い出した。

(Aなら何か分かるかな)

そう思い、KさんはAさんにメールを送った。

“今日、俺、長野のオルゴール館に行くって言ってただろ?いまその帰りでさ、車の中でオルゴールの音を聞いたんだけど……。オルゴールなんて買ってないんだよ”

するとAさんからの返事は短いもので、

“喜んでるんじゃない?”

と送られてきたという。

霊が、という部分を省略された文面を見たKさんは、Aさんにとって霊的な存在が身近であると感じたそうだ。


画像©Hebi B. PIXABAY




そんなKさんは、2001年11月にAさんを含めた自分の家族と長野に旅行に出かけたことがある。

KさんとAさんのほかに、Kさんの両親、Kさんの兄とその彼女の六人での旅行だ。一行は善光寺を訪れた後に諏訪湖の近くのホテルにチェックインし、ビュッフェ形式の夕飯をとった。

その後時間があったので、KさんはAさんと二人でふらりと散歩に出かけたそうだ。

ホテルの近くに遊歩道のようなものもなく、二人は車道の端をあてもなく歩いていた。すると5メートルほど先に靄のかかった人影と、その足元にアメリカンショートヘアらしき猫の存在があったという。犬の散歩が猫になったような図だった。

(へえ、珍しい。猫を散歩している人がいるな)


画像©ArtTower PIXABAY

と思っていたら、その影と猫は消えてしまった。ちょうど諏訪湖間欠泉センターを過ぎたあたりだった。時間は二十時頃で街灯らしきものも少なく、視界は良好とはいえない。

「あれ?今、誰かいたよね」

見間違いの可能性もあると思いながら、KさんはAさんを振り返り確かめた。

「…………いや?」

Aさんは意味深な間の後に答え、踵を返した。

「そろそろ戻ろう」

あたりにはコンビニもなく、KさんもAさんの後を追うようにしてホテルに戻った。部屋に戻ったところで、Aさんは具合が悪いといい、部屋の片隅にうずくまってしまった。

Kさんカップルは、Kさんの兄カップルと同室だ。Kさんの兄とその彼女も、具合の悪そうなAさんの様子を心配している。

「どうした?」

Kさんが声をかけると、Aさんは絞り出すように言った。

「……なんで猫まで見たの?」

咎めるような口調にKさんは驚いた。

「は……?」(どういうことだ?猫を見たことなんて言ってないのに……)

猫まで、という言葉から、それ以外の存在が見えていたのであろうことも窺えた。

「猫がついて来てる」
「何言ってるんだ、お前」
「私も見えたんだけど、分からないふりをしたのに……。あなたが見えたって分かって、この人にならわかってもらえると思って憑いてきちゃったんだよ」

Aさんの話によれば、その猫の霊は、Kさんに憑いているのではなかった。より霊的な力の強いAさんに憑いており、彼女にはもともと狐の霊が憑いていたため、相性が悪く苦しいのだという。


画像©hirow photoAC

「ごめん、そういうの分からなくて……。俺に何かできることある?」

Kさんが問いかけると、Aさんは部屋の中の三人に向かってこういった。

「携帯の電波でなんとかしてみるから、みんな携帯だして」
「え、携帯で……?」(どうやって何をするんだ?)

Kさんの彼女以外の三人は顔を見合わせた。

「電波があればなんとかなる。いいから、出して」

言われるがままに四人の携帯を一か所に集めると、Aさんが目を閉じて集中した。Aさん以外の三人は携帯電話の表示を見て驚くことになる。

(嘘だろ……!?)

四台の携帯電話すべての電波表示が一瞬にして“圏外”になったのだ。

「あ、いなくなった」

Aさんがそう口にした途端、ぱっと携帯の電波表示が戻ったという。Aさんはそれから調子が悪くなることもなく、本当に電波で猫の霊を祓ってしまったのだそうだ。

Kさんは語る。

「猫の霊と電波がどういう仕組みで関係していたのかは分かりません。自分は携帯電話を貸しただけですけど、目の前で霊的な存在に触れた話のひとつです」

彼女とはその後破局してしまったというが、これらの話は今もKさんの胸に印象深く残っているという。

(志月かなで 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

【志月かなで】
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