【声優残酷物語】プロデビュー出来る一定のルールは存在する!?

狂気の倍率

8000分の1。

みなさんはこれが何の数字化おわかりだろうか?実は、俳優を志したした人たちの内、プロの俳優になれる倍率である。

志したというのは、単に「俳優になりたいなぁ~」といったレベルのことではなく、劇団や俳優養成機関・学校などに行き、その世界にトライした人のうち8000人に1人しかプロにはなれないという数字なのである。

ちなみに、プロといってもピンからキリで、喫茶店のウェイトレス役で「いらっしゃいませ」という一言のセリフをもらうような場合でも俳優である。セリフがない場合は俳優ではなく、エキストラと呼ばれるものである(映像論的には、エキストラは演技者ではなく風景になる)。

であるから、しかるべき映画やドラマ・商業演劇の主役級の俳優になれるのは、そのまた何万分の一という倍率になってしまう。実にもって厳しい世界である。

だが、芸能界にはこれより遥かに凄まじい倍率の仕事がある。

声優である。その倍率、実に35000倍である。数字の書き間違いではない、三万五千倍なのである。




見果てぬ夢を追い求めて

日本の声優のレベルは高い。国際的にみてもきわだつて高い(この点、残念ながら日本の俳優の評価とは少々異なっている)。

あまりにも上手過ぎるので、海外のアニメファンやゲームファンは吹き替え版などには目もくれずに、オリジナル声優の演技を聞くためにわざわざ字幕版を選ぶ人が多い。

このレベルの高さを支えているのが教育システムの充実さである。

一部、一般的な俳優が横すべりでアテレコをする場合以外、声の演技はそれに高度に特化した声優がおこなう。昔は売れない俳優の副業という側面が強くあったが、アニメの量産と人気の高まり・クオリティーの高さから80年代あたりから職業としての声優の人気はうなぎのぼりとなり、このような高倍率に高止まりをしている状態なのである。

現在、声優になるためには声優の学校に行かなければならない。そこで高いレベルの教育とトレーニングをうけて、ふるいにかけられた人間だけが、商業レベルのオーディションを受けることが許される。

そこでさらに選別をうけて、もし受かればめでたくプロの仲間入りなのだが、ことはそう簡単ではない。

私は知人の10代後半のアイドル系声優の女の子に話を聞いてみた。東京生まれの彼女は、幼いときから声優になることを夢見て、中学を卒業すると昼間は全日制の声優学校に通うことにして、高校は夜間の学校にすることを選んだ。

より若い段階で、より充実した教育を受ければ世に出るチャンスは高くなる。彼女もまた、若いのに素晴らしく戦略的にキャリアを進めた。立派なものである。

学校に入って彼女が驚いたことがあるそうだ。




「同世代の子か゛あんまりいないんですよ」

 えっ、それは昼間の学校だからということ?

「ええ、普通ね高校生で声優になりたいっていう子は、夜間のほうに多くって、昼間は少ないだろうなって思っていたんですけれど、それ以上だったんですよ」

 どういう風に?

「なんかねえ、30代の人とかが、やたらに多いんですよね」

 なんでまた?

「あのね、声優ってなるの大変じゃないですか。だから学生時代には戦いもしないで諦めちゃった人が、サラリーマンやOLやっていてもやっぱり諦めきれないで、『夢よもう一度』って学校に入ってくるんですよ」

 ふーん、でもねえ、30代で学校に入ってデビューまでいけるものなの?

「あのね。まず無理なんですよ。30代デビューって。横すべりの有名な俳優さんとかなら別ですけれど。こういう人たちって今ものすごく多くって、無理なのは学校側もわかっているんだけど、学校の経営を考えたら居てくれなくちゃ困るんですって」

 なるほどね。

「それでね、こういう人たちって現実を見ないっていうか、見る力がないっっていうか、いつまでたっても諦めないっていうか、ズルズル引きずっっている人たちなんですよ。しかも地方出身者が多いんです」

 手厳しいね。

「私はやっぱり東京生まれで東京育ちだから、こういうことって感覚的にわかるんです。それでね、今、声優事務所は地方の人をとらない傾向があるんですよ」

 えっ? それはどうして。

「たとえば、地方出身で、学校出て事務所に入れてもらったとしても、カワイイ子がアイドル声優にしてもらう以外、すぐに売れることってまずないわけです。本業で食べられなくってバイト生活をする期間がものすごく長かったりするんです。そうすると、心の病気になっちゃう人がものすごく多いんです」 

 どのくらい?

「あのですね、これね。もう冗談じゃないぐらい多いんです。この間なんか、ストレスでおかしくなっちゃった事務所の人が、通りがかりのお葬式に殴り込んで、警察沙汰になっちゃったんですよ。すごいでしょ?」 

 で、事務所としても地方出身者はとらないと?

「私は、面接のときハッキリと言われました。つくづく東京の人間でよかったって思いました」

 うーん。つらい話だがね、これが現実というものなのだな。

 夢を追うのにも適正年齢と出身地があるのである。

(ヴァールハイト及部 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©PIXABAY

【著者紹介:ヴァールハイト及部 1968年 横浜市出身 大学卒業後サラリーマン生活を経て、フリーランスとして、映画・ショービジネス界で仕事をしている。芸能界ウォッチーでもある。】

 

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