
人気漫画の『ドラゴンボール』に例えると、クリリンやピッコロ達が圧倒的な強さを持つ敵に絶体絶命の状況に陥った時に、孫悟空が現れて勝利する展開!……と言えば、お分かり頂けるのではないだろうか?
前述した『白波五人男』とは、 首領の日本駄衛門以下、弁天小僧菊之輔、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の五人組の盗賊団が、盗みの標的と定めた呉服屋の浜松屋を相手に大立ち回りを繰り広げる……というのが、主なあらすじだ。
現代まで継承される様式美として、本作で表現されたのが、主役の五人が客席にポーズを決めながら、各々の名乗り台詞を言うという〝前口上〟という展開である。
この作品の様式美を劇中に取り入れて子供たちの心を掴んだ特撮作品が、石森章太郎氏原作の『秘密戦隊ゴレンジャー』【1975年4月5日放送開始】だ。
世界征服を企む黒十字軍から、人類の平和を守るために、赤、青、黄、桃、緑の原色をモチーフとしたアカレンジャー、アオレンジャー、キレンジャー、モモレンジャー、ミドレンジャーの五人の戦士こと「ゴレンジャー」が立ち向かうというは王道とも言える物語だ。
しかし、本作が従来の作品と差別化を図ったのは、五人の主人公たちが、『白波五人男』を彷彿とさせる名乗りの前口上を述べた後に、締めとして全員で「五人揃ってゴレンジャー!」という決め台詞と共にポーズを披露するというお約束=様式美を取り入れた点であり、それがヒットの要因と言えよう。
本作以降も、『スーパー戦隊シリーズ』は、この要素の発展に試行錯誤を重ね、『バトルフィーバーJ』【1979年2月3日放送開始】では、五人のメンバーが、各々のモチーフとなった世界各国に伝わるダンスをしながら名乗りを挙げるパターンを取り入れた。
その後、放映された『科学戦隊ダイナマン』【1983年2月5日放送開始】では、ヒーローたちが前口上を述べると同時に、たとえばレッドならば、その背後に真紅の爆炎が巻き起こる!……という具合に各メンバーのモチーフカラーと同色の〝爆発〟が起こるという要素が組み込まれた。
前述したダンスや爆発は、映像作品の特撮だからこそ可能な演出であり、『白波五人男』の様式美を継承しつつも、それを見事に発展させた偉業と言い切っても良いのではないか?
これらの取り組みがあったからこそ『スーパー戦隊シリーズ』は、現在も新作が毎年放送され続けていることは揺るぎない事実であり、第1作から様式美を作中に取り入れた着眼点は大成功であった。
それは、同時に様式美こそが、古来より日本文化を通して、我々日本人の心に愛されている思想だという事を証明していると同時に、その要素を取り入れてる特撮作品が長年に渡り、日本の子供たちや、筆者のような大きなお友達(苦笑)に愛されている真相は、今回論じさせて頂いた日本文化との共通点があるからだ!と言っても過言ではないだろうか!?
今回は、昭和期の特撮と我が国の古典文化との共通点について述べたが、次回は平成期の特撮作品を対象に考察をしていきたいと思う!
(平山賢司 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像『スーパー戦隊大図鑑デラックス』