
投稿 元葬儀屋さん
今回も私の妻が子供だった頃の体験談です。
私の妻は毎年家族で大晦日から朝にかけて元朝参りに行くのがお決まりの行事でありました。
元朝参りとは、世界遺産の有名な場所でありまして大晦日から大変な賑わいを見せる場所であります。そんな大混雑をする場所ですが、地元に住んでいて毎年通っている妻の家族にとっては地元の人だけが利用する比較的人の混雑のない抜け道を心得ているのでした。
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子供ながら寝ているところをたたき起こされ、否応なしに連れていかれる家族の行事に嫌気がさしていながらも家族の思い出として毎年楽しみにしていた行事だったとの事でした。
お参りを無事に済ませ、表参道から外れた裏参道を最下段が見えないほど続く長く狭い石段を下っていったそうです。
石段の横に提灯が一定間隔で遥か下の方迄つながっており、足元はとても薄暗いながらも幻想的な景色をつくりだしまるで夢の世界にいるようだったと言います。子供だった私の妻は兄に手を引かれその階段を一段々下っていくのです。
薄暗い石段の横には、うずくまっていたり足を延ばして座っていたりしている黒い人がところどころにおり、石段の遥か下の方まで数十人といるのだそうです。子供ながらにその黒い人達を見ていくと汚れた軍服を着ており足が無かったり、腕が無かったりしているのがぼんやりと見えるのだそうです。
家族に目をやると、それらの黒い戦時中らしきの黒い人々は自分にしか見えていないようだと感じたそうですが、家族と一緒だったので怖いという感情は無く、何か哀れに思う気持ちだったのだそうです。
赤い提灯の薄暗い灯りに照らされて人々が行きかう参道で自分たちの存在に気が付いて欲しいと願う霊達が大勢いることに手を合わせるばかりだったと言います。
(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©写真素材足成