
投稿 タマリンさん
専業主婦のYさんから聞いたお話である。
夫も子どもも出払った午前中、いつもの通り一気に家事をすませ、いつもの通りコーヒーで一息ついた。毎日の日課を次々とこなして今日も無事に終わる、という日々をYさんは愛していた。
昨日までホットで飲んでいたコーヒーを今日はアイスにする。そろそろ冷房の季節になった。Yさんは半袖から突き出るわが腕を見て、若い頃はこの時期から脱毛に気を遣っていたっけ、と思い出す。もう何年も腕の毛なんて剃っていない。ちっとも気にならなくなった。自嘲気味に、年齢相応にたくましくなった腕を見つめていた・・・。
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ちょうどその時。ハッキリと、なにか手のひらのような感触が、腕の表面を、ゆっくり、すーっと撫でて行ったのがわかった。
ゾクリ
鳥肌が立ったのは、触られた感触のせいか、感触が正体不明のせいか、判断がつかない。しかしはっきりと、腕にはなにかの感触が残っている。気のせいじゃない。断じて気のせいじゃない。
Yさんは「うっかり」とか「気のせい」というものが嫌いで認めることが出来なかった。誰かが触れたことには確信があった。しかし、この部屋に自分を触る何物もいないことも、確実だった。白黒つけたがりのYさんには苦しい状況となった。
ゾクリ
まただ、また来た。のぞむところだ!・・・正体不明の出来事を、怖いとかなぜとか感じる前に、Yさんが思ったのは「あれは気のせいなどではない!」というものだった。そこで、Yさんは五感を澄ませた。
『ほら、なにかが触っているよね、うん、触っている、触っている、肘から手先の方に向かって、右腕をなにかがすべるように撫でて行っている。今、ここ、出た!』
そして同時進行で、Yさんは両目を見開いた。自分の右腕を見つめる。
「ほら、さっきと一緒、さっきもこうだった、確かにだれもここにはいない。確かにだれの姿もない」「なにかが私の腕を触った。でも”なにか”は姿を持っていない。そして私はヘンではない」
Yさんがこの話を人にするのは、これが初めてとのことだ。
(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©Pexels PIXABAY