会社に現れた見知らぬ女性

投稿 にうまさん

 これはアタシ自身が直接体験したというよりは、”巻き込まれた”体験と言った方が正確かも知れません。

 3~4年前、上京して初めて勤めていた職場での話です。その職場に就いた経緯や事情は、あまりにも長くなるので省きます。

 某区のその製造業関係の職場は、非常にこじんまりとした小さなビルを会社とし、アタシ以外の社員はみんな家族、プラス古くからその家族と付き合いのある年配の方一人、という完全なる少人数の親族経営の職場でした。その会社の1、2階部分が職場、3階には社長の両親が住み、アタシは4階にある部屋を借り、住み込みの形で働いていました。

 入社当時、専務だったその人が翌年から社長になるのですが、訳あってアタシとその社長との関係がどんどん悪くなっていき、それと共に会社そのものとアタシの関係も悪くなっていきました。




 日を増すごとに社長の口調がきつくなっていき、日を追うごとに気を病む思いで不手際が多くなるアタシに、しまいには毎日のように「役立たず」「使えねぇな」などと罵声を浴びせられるようになりました。

 その年、アタシは社長の指示によって夜間の職能学校に通っており、講義自体は夜に行なわれていたのですが、その学校が関わるイベントなどがあった時は、朝から参加するといった事もありました。

 会社の居心地の悪さから、少しでも解放されるという心持ちで参加していたとあるイベントの日の夕方。イベントも終わり、どこか適当に時間でも潰そうかと考えていたその時、社長から電話があり「終わったらすぐ来て職場に顔を出せ」との事でした。

 急いで会社へ戻ると、「まぁそこに座れ」という事でした。一体何を言われるのかと恐々した思いだったのですが、切り出された話は全く予想もしていなかった内容でした。




 作業員兼経理業務をしていた社長のお姉さんがいるのですが、毎朝出勤すると、3階の両親達に挨拶するのが日課となっていたそうです。そのお姉さんが階段を上がっていくと、2階に差し掛かる直前、一人の女性が無言でゆっくりと階段を降りて来て、そのまま1階へと降りて行き外へと出て行ったのだそうです。

 上階へ行く階段は一ヶ所しか無く、いつ出入りしていたのかも解らず、しかも全く見覚えのない女性だったと言います。

 その時間アタシは既にイベントの為に出ており、社長達も既に仕事に取り掛かっていた為、お姉さんのみが目撃したと言います。

 「友人は連れて来てもいいとは言ったが、女の人を連れ込んで泊めるのはどうかと思うぞ」などと、はなからアタシが連れ込んだ体で説教をされました。

 確かに、「友人を部屋にあげてもいい」という事は入社時に言われましたが、アタシが部屋に友人を呼んだのは、この会社から引越す際に手伝いで加勢してもらおうと呼んだ時の一度しかありません。つまり訊問された時点では、ただの一度も人を部屋にあげた事など無かったのです。




 流石にアタシも、「誰も部屋に呼んだ事は無い」「女の人なんて覚えがない」と強く反論しました。万一連れ込んでいたとしても、社長達の目につくような時間帯に会社の中を行き来させるなんて、いくら何でもそこまでアタシはバカではありません。

 不当に社長とそのお姉さんから何十分も問い詰められ、最終的に社長は「そこまで言うなら今回は信じてやる」と、明らかにまだ疑っている様子で渋々受け入れているように見えましたが、アタシにしてみれば、あまりにも不当な言いがかりをそんな一言で片づけられてしまう事に最悪な後味を感じました。

 正体不明の女性という事で非常に不気味ではあるのですが、正直な所「アタシを貶める為に口裏を合わせて作った話なのでは」という疑念は今でもあります。考えすぎだとも思えますが、それくらい当時のアタシは精神的に参っており、事実その女性の件から一層会社に対する嫌厭の感情が強まりました。

 その翌年の夏、別れの挨拶も社長から拒否される程に険悪化した中で、アタシはその職場を去りました。女性が何者であったか、そもそも話自体が事実だったのかは、解らずじまいです。

 なお、その会社はアタシが辞めて数ヶ月後に廃業したそうです。

(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©rawpixel PIXABAY


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