
1982年から放送されている長寿人気番組『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系列)。金曜の夜中という、特殊な時間帯で放送し、多くのマニアたちを毎週色々な趣向で喜ばさせてくれるエンターテイメントはこの番組以外にはなかなか見ることができない。
毎週変わる番組のテーマもその度に話題を集めるが、ヘンな日本語に一瞬聞こえてしまう洋楽と、それに合わせてコミカルな俳優たちが演じるビデオクリップが最高に愉快な「空耳アワー」もまた多くのファンを持つ番組の人気コーナーである。
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その「空耳アワー」にて、一度だけ曲が紹介されずに終了した回が存在していた。
1990年代後半頃、「空耳アワー」の収録時間が始まっても、ソラミミストの安斎肇が画面に現れないことがあった。安斎の「遅刻癖」は今にはじまったことではないらしく(当時いつも9割方遅刻してやって来たらしい)、特にこの日の収録時にはどのように時間を計っていたのか……1時間経っても現れない安斎に対し、タモリほか番組スタッフ全員が腹の底からご立腹だったというのだ。
そして、遂には安斎が不在のままカメラを回し始め、タモリが「一度、ガツンと言ってあげないとな」と安斎がやって来るのを待っていた。すると、1時間後に安斎がコソコソとスタジオへ入ってきたのを見るなり、タモリは「ちょっと!なにやってんの!」と珍しく声を荒げて叱咤。
普段では考えられないタモリの姿を見た安斎も、これはただ事ではないと気付いたようで、「すいません」と平謝り。すると、続けてタモリは「こっちは1時間も待ってんだよ」「いったい何やってたのよ!」と急きょ予定を変更し、テレビ公開説教を行うことになったのである。
安斎はこの日のスタジオへ来る直前まで、本職のイラストの仕事をしていたらしく、出かける時間になっても作業が終わらなかったという(しかし、締切はその時点ですでに5日過ぎていた模様)。そして「風呂に入ろうとしたら水が出て冷たかったため(?)結果遅刻してしまった」とワケの分からない理由をタモリに吐露した。
さすがの温和なタモリもすっかり呆れて、「今度から遅刻したらお前抜きで空耳やるからな!」とさらに激怒し始めた。それによって、このコーナーの放送時間が足りなくなり、番組史上初の「安斎、遅刻のため紹介作品なし」という結果になったのである。
その後、安斎は猛省したのだろうか、番組へは遅刻はあまりしないようになったようである。そして、今では遅刻ゼロ記録を更新しているという。
なお、タモリがテレビで激怒する模様を放送したのは、このタモリ倶楽部での事件が唯一であり、ネットでは「伝説の放送事故」として話題に挙がることがある。
(文:江戸前ライダー ミステリーニュースステーション・ATLAS編集部)