
妖怪「くだん」に関して山口敏太郎的に解釈してみたい。妖怪「くだん」と言えば、妖怪マニアならずともよく知られた存在である。普通の牛の母体から生まれ、地震等を予知して死んでいくとされる「予言獣」である。人間の顔・牛の体を持っている妖怪と言われており、顔が牛で体が人間である妖怪「牛女」とは別種であると言う説と、同一種であると言う説がある。
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筆者は以前から、人間の顔をした牛が生まれることにより、地震が起こるというこの「くだん伝説」についてただならぬ興味を持っていた。そもそも牛と言うのは敏感な生物であり、人間が感知できない微細な地震さえも察知してしまう。そのため大きな地震が起こる前段階の前震が頻発することで、母体にストレスが溜まり奇形の子牛を生み出すことがあるのではないか、その後大きな本震が発生するため、(奇形の牛が生まれたから、大きな災害が起きた)と言う伝説が成立したのではないだろうかと推測していた。
この話と関係があると思われる研究成果があった。2008年8月26日読売新聞のオンライン記事によると、牛やシカなど偶蹄目は、食事や休憩の時に大部分の個体が南か北の方向を向いていることが判明したのだ。これはチェコとドイツの共同研究チームが行ったもので、米国科学アカデミー電子版にそのデータが発表された。
グーグルアースを使って世界各地の牧草地308か所を撮影し、牛8510頭を観察したところ、休憩中や食事中などは大部分の牛が北か南を向いていたと言うのだ。学者たちは渡り鳥や回遊魚のように地磁気を感じる仕組みが偶蹄目には備わっているのではないかと結論づけている。なおチェコのチームは鹿も同じように観測しており、やはり牛と同じ結果が出ていた。
大きな地震に伴って地磁気は、変化らしく、地震関連の研究を行っている学者たちは地磁気の観測に力を入れている。地震を予知すると言われた牛が、地磁気を感知できるのではあれば、「くだん」伝説の真相解明に何か大きなヒントを得たような気がしてならない。
なお、ATLASではいままでに何度か牛女を題材にしたアーカイブがある。六甲山の牛女は3種類、「牛の首」伝説と「牛女」の関連性、心霊スポット扱いされたお寺が対策「牛女は引っ越しました」 、六甲山の妖怪「ハッスルじいさん」「牛女」 、牛女の暗示、新潟北陸地震、「牛女」が金沢で目撃された、大震災の前兆、「牛女」を見た人々、熊本で広がる「牛女」の噂、などである。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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