英雄を追い込む猪の伝説「日本武尊と伊吹山の荒ぶる神」





2019年の干支は亥、猪である。

猪は古来から山野に生息し、雑食性で人間の生活域と比較的近い所に顔を出す生物であったこともあり、世界各地の神話などに姿を現してきた生物でもあった。

猪は多産であるため豊穣の神ないしはその遣いとされることもあったが、神話をみていくと霊獣でありながら人間に害をなしたり、英雄を殺してしまうエピソードが多い獣でもある。




猪突猛進という言葉もあるが、猪は本来臆病な性格をしており、急に出くわした人間に対して攻撃的な態度を取ることが多い。そのため、神話等では勇猛で凶暴な生物として紹介されることが多くなってしまったのだろう。また、人間が農耕をするようになって後は作物を荒らす害獣としての側面も出てきたため、ともすれば悪役めいた描写をされるようになってしまったのだろう。

そんな猪は、世界各地の神話で英雄とされる人間と相対し、時には死因を作ったりする生物として語られてきた。日本神話の英雄の一人、日本武尊も猪の被害者の一人だ。

日本武尊は東征の後半で伊吹山に荒ぶる神がいることを知り、草薙剣を伊勢の美夜受比売(ミヤズヒメ)の元に預けたまま、素手で倒してやると豪語して入山する。

すると日本武尊の前に牛ほどもある巨大な白い猪が姿を現した。




日本武尊は伊吹山の神の遣いだろうと判断して無視して通りすぎてしまうのだが、実はこの猪こそが伊吹山に住む荒ぶる神の化身であった。無視された事に怒った伊吹山の神は雹を降らせたり霧で道を迷わせて日本武尊を心神喪失になるまで追い込むのだった。

辛くも下山した日本武尊は清水を飲んで我に返るが、衰弱によって病の身となり、故郷である大和を偲んで歌を読んだ後に亡くなるのである。

現代でも伊吹山の山頂には日本武尊像があり、また神の姿を象った白い猪の像も建っている。

(田中尚 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像『ヤマトタケル (6) (角川コミックス・エース)

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