山口敏太郎が薦めるUMA関連書籍【第3回】『世界の怪獣』

世にまだUMA=未確認生物という言葉がなかった時代の本である。タイトルに怪獣という言葉が躍っているのが、高度経済成長時代の日本の雰囲気を伝えている。

昭和40年代に子供時代を送った中高年にはたまらない一冊であり、私も小学生時代に貪り読んだ。UMA・未確認生物の黎明期を支えた名著であり、かなりの高額で取り引きされていたが、近年シカルナ工房から復刊されたために旧版・復刻版含め、比較的安くなった。




内容は昭和の児童書そのものであり、空想たっぷりのユニークな内容になっており、逆に信じられる記事の方が少ない。だが、それもウルトラ怪獣ブームに湧き上がる昭和40年代の空気感が伝わってきて、なかなか心地よい。出てくる怪獣も味わいがある。「化け物カタツムリ」「ムカデ怪獣」「セネガルの一角獣」など、意味不明で出典不明の怪獣たちが紹介されているのだ。

当時の小学生は疑いながらも、「ひょっとしたら、広い世界にはこのような怪獣がいるかもしれない」と恐怖を感じながらも何度も熟読し、怪獣の世界に心を躍らせた。

作者の中岡俊哉氏は私が少年時代に憧れた作家の一人であり、70年代のオカルトの立役者であった。特に心霊写真本がベストセラーとなり、学級文庫には何故か中岡俊哉の心霊写真本がおいてあったのは昭和のあるある風景である。

心霊写真という言葉が日本語に定着したのはこの本の功績ではないだろうか。




中岡氏は2001年に鬼籍に入られたが、70年代から80年代にかけて、妖怪・心霊・UMA・UFO本の世界で大成功をおさめ、佐藤有文氏、水木しげる氏、斎藤守弘氏らと並び児童書におけるオカルトブームを牽引した。

此処に紹介した全員がすでに他界しており、昭和が遠くなったと痛感させられている。水木しげる氏も含め、昭和の作家たちは、子供の想像力をかきたてるダイナミックな演出に長けていた。それは戦中戦後の動乱期を経てきた人生経験のなせるものであったのだろうか。

中岡氏は戦時中は馬賊を志し、八路軍にも参加した経歴を持っている。しかも、祖父は伝説の浪曲師・桃中軒雲右衛門である。中岡氏のDNAと経験が奇跡の怪獣本を生み出したのかもしれない。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©「世界の怪獣」シカルナ工房、「世界の怪獣」秋田書店、中岡俊哉




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