
元L⇔Rのボーカル・黒沢健一が亡くなった2016年12月5日から、早二年経過し今年で三回忌になる。二年前に彼の訃報をメディアで知った方達はたくさんいたであろうが、中にはL⇔Rや黒沢健一自体を知らなかったという方や懐かしい名前だけどしばらく見ていなかったという方もたくさんいたのではないだろうか。
このバンドは1990年に結成され、黒沢健一(メインボーカル・ギター)とその弟・黒沢秀樹(サブボーカル・ギター)と木下裕晴(ベース)の三人で活動していた。(キーボード・コーラス担当していた嶺川貴子も1992年に加入していたが1994年に脱退している。)1997年に活動を休止し、とうとう復活することなく事実上解散している。
「KNOCKIN’ ON YOUR DOOR」(1995年)が一番人気を獲った代表曲であったが、他にも数々のヒット曲を出していた。当時はテレビに出まくり武道館ライブを行うなど、ブレーク中であったにも関わらず急にメディアに姿を現さなくなってしまった。実に謎が残るバンドであった。
L⇔Rという名前の由来?
まずこのバンド名の由来に関しては数々の説が浮上していた。分かりやすい記号っぽいもので音楽によく使われる言葉にしたかったため、ミキシング・コンソールにある左右チャンネルの「L」と「R」から名付けたとされている。それが黒沢兄弟のつむじが左右逆だったことともこじつけられている。
セカンドアルバムのタイトルになっている「Lefty in the Right」を省略した名前ともされていたが、これも後付けされたことになっている。ちなみにこれを略すとサブタイトルの「左利きの真実」となるがなぜなのかは明かされていない。
活動休止の理由?
なんとアルバムを作っている最中にメンバー内で異変が起こった。急にスタジオから黒沢健一が姿を消してしまったのだ。本人も当時の記憶がはっきりしていなかったそうだ。一度売れるようになってしまうと次へのプレッシャーが大きくなっていく。そして多忙になってしまったことも余裕がなくなっていた彼の精神を追い詰めてしまったのであろうか。理由はどうあれL⇔Rというグループ自体を背負って活動していくことに限界が来てしまった瞬間だった。
グループ自体は活動休止しても彼らの音楽は終わらなかった。それぞれ別々に音楽活動を続け、メンバー同士で一緒にライブをやったこともあり交流は続いていた。だが黒沢健一の志半ばの死によって、惜しくもL⇔R自体の復活ライブはできないままとなってしまった。もしかしたら、彼自身がL⇔Rという名前の呪縛にかけられてしまっていたのであろうか。
ファーストアルバムが「L」というタイトルだがセカンドアルバムから8枚目のアルバムまで、タイトル名が「L」から始まり「R」がつく単語が必ず後に来るようになっていた。だが最後のアルバムとなってしまった「Doubt」のみ、「L」と「R」が全く入っていないタイトル名である。よりによって、このアルバムの収録中に起こったことが活動休止のきっかけになってしまった。なんとも皮肉な事実である。
黒沢健一の短い生涯を暗示していたヒット曲?
L⇔Rが活動休止した後もソロライブツアーを行ったりCDを出したり、黒沢健一の音楽活動は続いていたが2015年10月のリハーサル中にめまいを起こし脳腫瘍が発覚する。翌年に闘病中であることを発表し、その年の12月にファンや関係者に惜しまれ他界してしまった。48年という短い生涯であった。
彼がL⇔R活動時に出した「HELLO,IT’S ME」(1994年)というヒット曲の歌詞(黒沢健一作詞)は、今になるとまるで彼の早い死を暗示していたかのように思えるのである。この曲はポッキーのCM曲としても流行り、「四姉妹物語」という映画の主題歌としても話題になった。ソロ活動中もこの曲を綺麗な歌声で奏でており、優しいがどことなく切なく感じる曲である。
「Hello 僕はここにいるよ 昨日までの哀しみ捨て」という歌詞は不思議に、闘病中の苦しみや死の哀しみから解放された後の黒沢健一の思いを綴っているかのようである。「声が聞こえるかい」というフレーズもあの世からメッセージを送っているみたいである。「Hello 僕はここにいるよ 持ちきれない夢抱えて」と彼は、音楽への想いややり残したことを抱えて天国で歌っているであろうか。
関連動画
黒沢健一/HELLO IT’S ME in 大阪
彼が作り続けた曲はまだ途中だったものもたくさん残されており、メンバー達によって未だに引き継がれている。黒沢健一オフィシャルサイトでもアレンジされた曲が販売されている。
彼のご冥福を願うと共に平成という時代が終わった後もきっと、彼の残した曲は我々の心のドアを優しくノックし続けてくれることを期待したい。
(ふりーらいたー・古都奈 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
参考サイト
黒沢健一-Wikipedia
L⇔R-Wikipedia
Techinsight【エンタがビタミン♪】
画像『HEAR ME NOW」