手塚治虫の漫画『W3』(ワンダースリー)は、週刊雑誌に連載されていたSF作品であり、かつ『ジャングル大帝』に続く虫プロダクション制作の3番目となるアニメ作品である。
もともとアニメ作品として企画された作品であり、「地球人を残すべきか否か」という評議のもとで、W3と呼ばれる地球外生命体の銀河パトロール員3名が地球の動物に姿を変えながら地球の調査を行なっていくというストーリー。そして、そこで出会った純粋な少年との触れ合いを描く作品となっている。
動物の姿のキャラクターたちは、現在でも十二分に通用するほどの可愛らしさで、そのようなキャラクターが地球人の存亡にかかわっているというのも、流石は手塚治虫クオリティといったところだろう。
しかし、本作を有名にしたのは実のところ作品の出来ではなかった。
通称「W3事件」と呼ばれるその出来事は、手塚治虫が起こした中でも、出版業界において史上例を見ないほどの大事件とされている。
当時、アニメ『鉄腕アトム』の制作中にアニメ『ジャングル大帝』までも制作することになったのだが、ジャングル大帝側の人手が足りないということでアトム側から一部移動、アトム側は手薄になるということで外注に回されることなった。
こうして、アトム側に残っていた人員が余るようになり、これを見た手塚が「新しいものを制作しよう」と提案し企画されたのがのちのW3となった。
“のちの”と断りを入れたのは、当初企画していた作品は『ナンバー7』というものだったのだが、なんと週刊少年マガジンにて先んじてアニメ放映された『宇宙少年ソラン』に似ているということがわかった。
実はこれ虫プロが盗用したのではなく、情報漏洩によって企画を盗用して制作されたのはソランのほうだったのだ。これによって虫プロは設定と共にタイトルを「W3」に変更することになった。
さて、ここからが事件の本題だ。
この当時、週刊少年サンデーと週刊少年マガジンはライバル関係にあった。このうち、マガジン側はサンデーにトキワ壮の面々を抑えられてしまっており不利な状況にあった。そのためマガジンは、この虫プロの新企画に熱心に誘いをかけており、そうして連載の確約を得ることとなった。
だが、W3の連載を始めて間もなく、なんと先の因縁の作品ソランのマガジン連載が決定。当然ながら手塚はマガジン側に抗議を行ない、ソランの連載を中止するよう訴えた。
結果は、・・・脚下。
その結果、手塚はなんと連載6回目にしてW3のマガジン連載を打ち切り、なんとマガジンに断りなくサンデーへ移籍し連載を開始してしまった。
それまで読んでいた連載作品が、突然他の雑誌、それもライバル誌で連載が開始され、しかもタイトルが同じにもかかわらず構想が改められているというこの事態は、そんな大人側の事情など知る由もない読者の子供たちを大混乱に陥れることとなった。
このことによる手塚へのクレームは凄まじいものだったというが、事態はそれで終わりではなかった。
マガジン側はこの事件によって編集長が変わり、さいとう・たかをや水木しげるといった、いわゆる”劇画”調の漫画家を起用するようになっていく。これは、ポップな絵柄であった手塚に対する、明確な脱手塚の意図があった。
結果、マガジンはその後梶原一騎による『巨人の星』の登場によって劇画ブームを巻き起こすことになり、一方の手塚は皮肉にも低迷期へと沈み込んでいく結果となった。のちに手塚は、「講談社に迷惑をかけてしまった」と謝罪をしている。
【参考記事・文献】
・https://dic.pixiv.net/a/W3
・https://note.com/zenkan/n/n8f3289ccb53b
・https://ameblo.jp/sgi-t/entry-12781882680.html
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