『不思議の国のアリス』の作者といえば、児童文学者かつ数学者であるルイス・キャロル。
クライスト・チャーチ・カレッジの研究生として寮住まいだった彼が、その学寮長のヘンリー・リデルの娘、アリス・リデルとその姉妹や母親と親しくなり、そのアリスにせがまれて即興で語り聞かせた物語が、「不思議の国のアリス」の原型になったと言われているのは、有名なエピソードだ。
そんな彼の都市伝説の一つ、「ルイス・キャロルは少女性愛者(ロリコン)」説は広く知られている。これまで、そうではないかと考えられるいくつかの証拠が上げられている。
列挙すると、少女のヌードや水着姿の写真を撮影し所持していたということ、アリスにプロポーズをしてそれがきっかけでリデル家と不仲になった、多くの少女たちと文通をしていた、といったものが上げられる。これらによって、「ルイス・キャロルはロリコンだった」という噂が、こんにちに至り浸透していったという。
ところが、これらの証拠と言われるものについては既に反論され、ルイスのロリコン説そのものがデタラメであるというのが主流になりつつある。これらは、主にジャーナリストであるキャロライン・リーチによる著作や、ルイスの日記を研究していたエドワード・ウェイクリングなどによって指摘されている。
前述したものでいうと、まず少女のヌード写真については当時のイギリスでは珍しいものではなく、むしろ「無垢・純粋の象徴」として写真家の主流な題材にもなっていたという時代背景がある。
もっとも、妙齢の女性の下着姿や、露出が激しい今で言うコスプレの写真については、不道徳との風潮があったために、そちらのほうで非難を受けていたことは事実であるそうだ。
文通については、たまたま知り合った見知らぬ少女相手にも文通をし、多くが現存しているという事実はある。それについては、ルイスの実の妹からも「よからぬ噂を立てられる」と忠告を受けていた。実際、ルイスが文通をしていた少女たちは、主に14歳未満であったそうである。
だが、当時の価値観では、むしろ10代後半の結婚適齢期の女性に対し、結婚する気もないのにもてあそぶ男性のほうが”危険”とされていた。妹からの非難は、そのことを鑑みての「数年後に適齢期となった少女たちに良からぬことをするのではないか」という危惧だったという。
そして、アリスへの求婚とそれに起因するというリデル家との不仲ということについてであるが、これについては、まず根拠として上げられたものがルイスの日記にあった。
日記では、1863年6月分のとあるページが切り取られていたことが確認されており、またこの切り取られたページ以降、頻繁に記載されていたリデル家の人々がほとんど登場しなくなっているのである。
いわゆるアリスへの求婚というのは、まずリデル家の話題が語られなくなった日記による「不仲になったのではないか」という疑いが発端となっている可能性が高い。なにより、ルイスが本当に求婚したのかについての証拠はなにも無い。
それでは、なぜリデル家の記述が無くなったのか。
実は、これが現在ルイスの新たな疑惑を生んでいる。第一にルイスが求婚したのはアリスの姉であるロリーナであり、断られたことで気まずくなり疎遠になっていったという説だ。
そして第二に、ルイスはリデル夫人と不倫関係にあり、このことが表沙汰になることを恐れたために距離を置くようになったという説だ。
リデル夫人との愛人関係説は、前述のリーチが著作で唱えたものであり極論であるとの批判もある。だが、いずれにせよルイスがロリコンであるという説を裏付ける証拠の数々は、現在ほぼ証拠としての効力を失っている。
【参考記事・文献】
・https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/40834.html
・http://www.hp-alice.com/lcj/myths/lolita.html
・https://mochizuki.hatenablog.jp/entry/2018/06/03/194915
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【文 黒蠍けいすけ】
画像 ウィキペディアより引用
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