『あしたのジョー』は、1967年から「週刊少年マガジン」に連載されていた原作・梶原一騎、作画・ちばてつやによる漫画作品であり、1970年から71年まではこれを原作としたアニメ作品が放送された。
日本のボクシング漫画の始祖にして金字塔と称される作品であり、のちに誕生するボクシングを題材とした作品の作者の多くが、本作を影響を受けたと言われている。
風来坊の矢吹丈が、元プロボクサーである丹下段平に見込まれてボクサーの道を歩み、ライバルの力石徹をはじめとして数々の対戦相手と死闘を繰り広げるという本作。ジョーが最終回で真っ白に燃え尽きるシーンは特に有名だ。
そしてなにより、力石が壮絶な減量を成し遂げ、ジョーとの対戦に勝利した直後に死亡したことで、現実に力石の葬儀が行われたこともあるなど、多くのミームや伝説を生み出しているこの力石の死は、ちばでさえも当該シーンを描き終えた後、スランプなのかはたまた心因性の病気なのかもわからない症状によって入院、休載するに至ったという逸話もある。
力石の葬儀の件でもおわかりの通り、当時の「ジョー」の人気、そして社会的な認知度はきわめて高かった。
1970年11月に割腹自殺を遂げた作家の三島由紀夫は、現場となった市ヶ谷の突入前日に、「ジョー」の最終回がどうなるのかを講談社の編集者に問い合わせたというような逸話があるという。ただし、これについては真偽が定かではないため、あくまで噂となっている。
また、1970年3月に発生したよど号ハイジャック事件。その実行犯である赤軍が、事件直前の「出発宣言」にて「われわれは明日のジョーである」(※正しくは「あした」だが、声明文では「明日」となっていた)と結ぶ声明を出したということもあった。
のちに一部実行犯らによれば、「ジョー」は特別な意味を持っていた作品と見なされており、憶測ではあるが”燃え尽きるまで戦う”という点に彼らの思想的解釈をつなげたのではないかとも考えられている。
ところで、先にも触れた「ジョー」の最終回といえば、「燃え尽きたぜ…真っ白にな…」のあの場面だ。読者たちから「助命嘆願」が送られたと言われる「ジョー」であるが、実は幻のラストシーンと言われるものがあったと言われている。
この「ジョー」のラストシーンは、その後「ジョーは死亡したのではないか」という説が各所で話題になった。それほどに、このジョーのラストシーンは象徴的だった。
幻となったシーンと呼ばれるその内容とは次のような具合だ。
真っ白に燃え尽きるコマの前に段平がジョーのもとへ行き、「お前は試合に負けてケンカに勝ったんだ。そう思え」と語り掛けるというものだったのだという。さらに、時が流れ盟友であるカーロス・リベラとともに療養所の庭のような場所におり、日が差す中で二人笑顔で戯れるシーンで終わる、といったものになっていた。
しかし、このラストの描写にちばが反論、「これだけの試合を描いてきたのに”ケンカに勝った”はないだろう」ということで、真っ白なあのラストになった。これが、いわゆる幻のラストシーンと呼ばれるものだ。
この内容は、梶原の没原稿の中にあったものだったと言われているが、あくまで都市伝説であり真偽のほどはわかっていない。ただ、ジョーが生きているのか死んでしまったのか、少なくともそのような個々の読者に解釈をゆだねるというちばの意向があったことは確かであるらしい。
因みに、燃え尽きた描写については、2008年に放送された『堂本光一PRESENTS 死ぬまでに知りたい10の事 ~知神(しりがみ)さまのギモン評議会』の番組内にて、医学博士により「ジョーは死んでいない」「疲れて休んでいるだけ」との見解がなされ、少なくとも医学的にはジョーは燃え尽きた後も生きているという結論がなされている。
【参考記事・文献】
・https://tomitoko.com/archives/7282
・https://gendai.media/articles/-/71341?imp=0
・https://ctokuta.hatenablog.com/entry/2017/08/28/224819
・http://www.animeere.seesaa.net/category/25729647-1.html
・https://news.livedoor.com/article/detail/3962935/
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【文 黒蠍けいすけ】