【怪談実話】プールの底に潜む少年





具体的な名称は伏せさせて頂くが、福岡県の某所に霊の出るプールがある。そこそこ人気のこのプールでは、なぜか水の事故が多発する。それも毎年のことである。

「多分、霊に引かれたんだ」

そんな噂は常につきまとう場所であった。目撃者も毎年数人おり、その証言が噂を裏付けている。

「水底に視線を感じるんです」「水中から、もの凄い念を感じます」 

霊感の強い子供たちは、そのプールを嫌悪した。兎に角、泳いでいると子供の霊が水中に出るというのだ。

この話をしてくれたOLの飯田さんは、中学の時、そのプールに行った。そして、世にも不気味な体験をしているのだ。その口調はいまにも泣き出しそうである。

「いやな話でね。今でも水に入れないんですよ。ポッカリとあの世への穴が開いていそうで・・・」

事件が起こったのは、昭和の末期の頃である。夏休みもあとわずか、思い出づくりの一環として彼女はプールに出かけた。友達数人と泳ぎに行ったのだが、泳いでいるといつしか友人とはぐれ一人ぼっちになってしまった。

「みんな、どこ行ったのかしら」

不安げにプールサイドに座っていたものの、皆の姿が群集に紛れてしまった。

「困ったな、でもそのうち合えるよね」

泳いでいるうちに合流できるだろうと思い、一人でプールに入って泳いでいた。

「息がどこまで続くかな」

彼女は、潜水を始めた。水中に深く潜り、当時ソウルオリンピックで活躍した鈴木大地選手の真似をしていた。バサロという泳法の真似をしていると…。

同じように水中を泳ぐ子供の姿があった。あの子、うまいわね、まるで魚みたい。飯田さんは、その子供に興味を示した。小学生の低学年ぐらいの男の子でかわいい顔で微笑んでいる。そして、こっちにおいでと手招きするのだ。

「なにかしら、おもしろそうな子ね」

相手が子供である為か油断した飯田さんが、子供の方に泳いでいくと突如、子供がぐっと腕を掴んだ。さっきまでの笑顔が消え、男の子は鬼のような形相で腕を放さない。

「やっ やめてよ、この子、何するの」




だが、その男の子は子供とは思えないもの凄い力で腕を掴んで離さない。彼女は必死にあばれ、逃げようとした。だが、男の子の指は、がっしり腕に食い込んでいる。

「なんなの、このままじゃ酸欠になっちゃう」

飯田さんの脳が段々と混濁していく。しかも、プールの底に飯田さんの腕を持って引っ張っていこうとする。いけない、あそこにいったら死んでしまう。
半狂乱になった彼女は必死に腕を振り払い、水中から飛び出した。背後から男の子の声が聞こえた。

「待ってよ、お姉ちゃん」

その声を振り払い、彼女はプールサイドで呆然と座り込んだ。バスタオルを肩にかけガタガタ震えていると、友人たちがやってきた。

「どうしたの、顔が真っ青よ」

たった今、経験した恐怖の事件を説明すると仲間の一人がこう教えてくれた。

「あたしは聞いたことがある。このプールで昔死んだ人がおったらしいよ。プールの底で水死したらしくて、プールの水を抜くまで発見されんかったらしいわ」

因みに友人の話によると、その後その子供の霊は、度々水中で人に悪戯をすると言われているそうだ。

「あんたたちがあたしを放っていくからよ」

結局、ふてくされたまま飯田さんは、友人たちと記念撮影をしてプールから帰宅した。

数日後、写真を現像した彼女たちは騒然となった。記念撮影の背景になったプールのあがり台のところで、小さな片手が今にも陸にあがらんとばかりに、ぎゅっと台を握り締めていたのだ。

以来、何十年も彼女はプールに行っていない。それは、あの男の子がまたやって来そうな気がするからだ。

(聞き取り&構成 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)





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