妖怪

【怪談】薮の中

ある夏の事です。私は、白い蛇がじーっと私を睨んでいるのに気付きました。見ることが出来れば幸運が訪れるという白蛇がいるだけでもビックリなのに、まさしくその物とにらめっこしているのです。

ところが仰天した私は反射的に棒でその蛇をはじき飛ばしたのですが、蛇が運悪くたき火の中に入ってしまったのです。蛇は火の中から脱出すると苦しみながら逃げていきました。




その夜、私は夢の中で不思議な歌声を耳にしたのです。「かごめ、かごめ、篭の中の鳥は♪」これはなんだろう。私は不信に思いながらも目を覚ましました。その時、私はベット横の机の上に人間が背を向けて正座いるのに気がつきました。老婆です。私は少し驚きましたが、錯覚だと思いまた眠りにつきました。

次の夜、また夢に歌が出てきたのです。「いついつ出やる。夜明けの晩に♪」私の恐怖が頂点に達した時、また目が覚めました。まさかあの老婆も…。不安は的中しました。しかも昨日のように完全に後は向いていません。振り返ろうとした姿勢のまま座っているのです。私は布団をかぶって寝てしまいました。

3日の夜、私は寝ないようにしました。しかしついに深夜、ぐっすりと寝てしまったのです。そして夢の中「鶴と亀がすべった♪」またきた。私は目を覚ましました。異様な空気が部屋中に漂っています。その妖気の中、私の目は何故か老婆の方に…。いた。横顔が確認できます。今にも振り向きそうな気配です。私は気が遠くなるのを感じました。

そして4日目、私の恐怖は爆発寸前でした。歌は最終章に向かっていますし、老婆が振り向くのも時間の問題です。不安を抱えたまま私は深い眠りにつきました。そして夜 あの歌が夢の中にこだましたです。「うしろの正面だあーれ♪」私は飛びおきました。ついに終わってしまった。私は恐怖に震えました。そしてふっと机の上を見るとあの老婆がゆっくりと振り向きました。

老婆の顔はやけどでただれています。また老婆の背後にはどす黒い渦が巻いており、大きな穴を開けています。さらに老婆は私に向け細い手をにゅーと伸ばしてきたのです。やめてくれっ。私は逃げようとしました。しかし老婆は背後からしがみついてきます。あの異界に引きづり込まれてしまう。私は必死に抵抗しました。しかし、体はどんどんと引きづられて行くのです・・・。

そうだ。私は一瞬ひらめいたのです。あの歌に答えればいいんだ。

「おまえは蛇だ」

私が言ったその瞬間、私の全身は急に軽くなりました。さらに部屋は何事もなかったかのように静まりかえっています。

それ以来私はあの歌を夢の中で聞く事もありませんでした。やっぱりあれは蛇だったのでしょうか。夏の悪夢だったのでしょうか。今となっては全てが蛇と共に薮の中なのです。

(ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)