【怪談】廃村の夜

私の大学時代の友人から聞いた話です。

H君は高校時代ラグビーでならした猛者で、万能のスポーツマンでした。そして彼は寝袋と小型テントを片手に日本中を旅するのが大好きで、特に寂れた廃村などで野営をするのを趣味としてました。そしてH君が大学3年の夏休みの時高山植物の写真をとりに、某県のある廃村で一人野営した事がありました。

その夜の出来事です。深夜テントの中で熟睡していたH君は野獣のような声に飛び起きました。・・・一体あの声はなんだろう。そっとテントを抜け出たH君は、その声のしたほうに行ってみる事にしました。ちょうど昼間うろついていた村の家屋群のあたりです。H君は懐中電灯を持ち、その場所まで歩きはじめました。

その時です。ふと目の前を見ると、人影が動いているのです。なんだ廃村とか言っても人がいるじゃないか。あの人も声を聞いてかけつけてんだな。そう思うとH君は急に強気になりました。そして前方の人影に駆け寄ると声をかけたのです。

「こんばんわ、あのー」

H君の声に反応しその人が振り返りました。するとその顔はどろどろにとけ、半ば腐っていたのです。そしてその化け物は「あーっあーっ」と何やらうめきながらH君につかみかかろうとしました。その右手がH君の腕をつかんだ瞬間、いやな臭いが鼻をつきました。何か腐ったような臭いです。「やっやめろ、離せ」H君が強引にその男の手をふりほどくとなんとその腕は「ばさっ」と途中からもげてしまったのです。




こいつは死人なのか。いつのまにか廻りには数人の化け物が集まってきています。恐怖のあまり心はパニック状態です。H君は脱兎のごとく走り出しました。化け物達はよたよたと追っかけてきます。しかも逃げる途中の物陰や廃屋から新手の化け物が飛び出してきます。臭い息をはきながら奴らは襲いかかってくるのです。腐った肉汁を飛び散らせながらH君は化け物達を吹っ飛ばして走り続けました。

そして無我夢中走り山中まで逃げ込みようやく恐怖の一晩を過ごしたのでした。翌朝H君は考えました。あれは自分の夢でなかったのだろうか。あんな事は現実にはありえない全て幻覚だ。

H君は勇気を持ってもう一度あの廃村に行ってみる事にしました。何も変わりはありません。昨日の昼間見た状況と一緒です。テントもそのままでした。やはりあれは夢だったのだ。H君は荷物をまとめこの場所をい去る事にしました。そして村はずれに来た時、あの昨夜の化け物の「つーん」とした臭いが鼻をつきました。

はっとH君が振り返るとそこは墓地でした。かつて土葬が行われていたその村の墓地だったのです。H君は再び視線をはずし歩きだそうとした時、ある恐ろしいものをみてしまいました。墓石の隙間や地中の穴からH君をじっと見つめる無数の目があったのです。

(ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)





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