芸能都市伝説

ドラマ化された小説「初恋芸人」はキャスティングを予知していた!?

NHK BSプレミアムで放送されていたドラマ『初恋芸人』が先日最終回を迎えた。柄本時生の初主演作であり、元SKE48の松井玲奈や小堺一機、溝端淳平などの豪華なキャストや、驚きと切なさが詰まったストーリーで話題を集めた春ドラマであった。

このドラマの最終回を見て、一部の松井玲奈ファンやSKEファンが喜んだシーンがあった。それは孤独な人生を歩んでいた市川理沙(松井玲奈が演じるドラマのヒロイン)が、『避雷針少女ジュリ』というアニメのオフ会に参加したことで、孤独から救われるというシーンであった。

何故このシーンを玲奈ファンは喜んだのか? それは、松井玲奈がSKE48のメンバーとして活動していた時期、松井珠理奈というメンバーと共にW松井と呼ばれていたことに関係している。玲奈と珠理奈はSKE48の2大人気メンバーであり、グループの顔であった。総選挙なども開催されているグループにあっては仲間であり、ライバルでもあった。この2人の関係性に注目しているファンは多い。元気活発なタイプの珠理奈と違って、玲奈はオタクで根暗で物静かなタイプとして知られている。そんな玲奈がSKE48の顔となる人気メンバーとなったことは、芸能界のシンデレラストーリーの1つと言っても良いだろう。

「初恋芸人」で玲奈が演じたヒロインも学生時代からずっと孤独な女性だった。そんな彼女がジュリという女性に救われたという展開を、玲奈ファンに向けたサービスだと感じたファンも多かったのである(W松井のファンには、2人の絡みを「じゅりれな」と呼んで楽しんでいる者も多い)。

だが、この「初恋芸人」は2009年に出版された小説が原作となっているドラマである。SKE48が誕生したのは2008年であるが、当時はまだ「じゅりれな」や「W松井」と2人を呼ぶようなファンもほぼいなかった。いやそれ以前に、ドラマ化されることはもちろん、ヒロインを松井玲奈が演じることも執筆時に想定していた筈が無い。

松井玲奈が孤独な少女を演じて、玲奈を救うキャラクターの名がジュリだったこともただの偶然だったのだ。

だが、「初恋芸人」における偶然はこれだけでは無かったのである。ドラマでは小堺一機が演じている山形ツチノコというお笑い芸人がいる。この山形ツチノコ、原作の初登場シーンは、主人公がテレビで小堺一機の出演するバラエティー番組を見ているところで現れるのである。(現在、小学館から発売中の文庫版では加筆修正がされており、小堺一機の登場は無くなっている)

何故か、最初からドラマ化されることも、キャスティングも知ったうえで書かれたような味わいもある不思議な小説『初恋芸人』。

実はこの小説の原作者は、UMA研究家としても知られ、オカルトや超常現象を扱った番組にも多く出演している中沢健である。オカルト番組から中沢を知った人間は、彼が恋愛小説を書いていたことに驚いたようだが、中沢健はオカルト以外の仕事でも不思議な現象を起こす作家であるらしい。

文:クリーンヒット真弓