消えた娘が老婆になって帰ってきた 遠野「寒戸の婆」

 寒戸の婆は、民俗学者の柳田國男の「遠野物語」に出てくる妖怪。それによれば、岩手県遠野市の寒戸にいた娘が、樹の下に草履だけ残して姿を消すという事件があった。

 何年か経った後に、嵐の晩に娘が帰ってきたのだが、その姿はすっかり老いさらばえてまるで老婆のようだったという。

 この話は柳田國男が同地の民話収集家、佐々木喜善の収集した話から取り上げたものだが、その話では娘が寒戸ではなく登戸の生まれと言うことになっており、また老婆は一泊して山に帰る。それから毎年、この老婆が村に来るたびに嵐となったため、村人達は巫女や山伏に頼んで村境に石塔を建てたところ、老婆は村を訪れなくなったとされている。




 実際に登戸の茂助という当主の娘が消息を絶ち、数十年後に山姥のような姿で村に現れたと言う話が明治初期にあった。また、遠野に寒戸という地名は存在しないため、実在の話を元にした噂から発展した伝承だったため、柳田國男が紹介する際にあえて地名を変えたのではないかという説もある。

 地名が名前に着いた老婆の妖怪は昔から多い。

 黒塚の老妖怪も住んでいた岩屋のあった場所から名付けられているし、国道42号線のトンネルに出る老人の妖怪「あたご」も現代妖怪だがトンネルのある地名が名前になっている。

 しかし「寒戸の婆」は妖怪になってしまった背景を考えると、どこか物悲しい空気をたたえている話でもある。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©PIXABAY




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