神話から名作を経て昭和の妖怪図鑑で蘇った、心優しい巨人アンタス





 巨人アンタスは「世界妖怪図鑑」(立風書房 佐藤有文著)の中でも数少ない人間の味方であり、心優しい妖怪のひとつであった。

「巨人アンタスは、ギリシアの山奥にすんでいて、とても知恵がはたらく。妖怪というよりは、心のやさしい巨人だ。悪魔とか魔女、猛獣などに追われていると、両手で運んで助けてくれる」(原文ママ)

 このアンタスとは、一体何者であろうか。

 ギリシアの山奥に住んでいるということから推理すると、大地の女神・ガイアと海神・ポセイドンの子で、巨人で知られるアンタイオスがモデルの可能性が高い。



 アンタイオスはギリシア神話に登場する巨人のひとり。彼はリビアに住んでおり、非常に好戦的な性格であった。屈強そうな旅人に戦いを挑んでは相手を殺し、敗者の頭蓋骨や持ち物の宝物をポセイドンの神殿に集めて飾っていたという。

 ある時、神に12の試練を受けている最中のヘラクレスがリビアを通りかかり、アンタイオスの挑戦を受けた。英雄のヘラクレスも、流石に何度倒しても復活するばかりかどんどん強くなるアンタイオスの怪力に苦戦する。アンタイオスは大地に足がつくたびに力が強くなるという特徴があったのだ。

 しかし、ヘラクレスも闘っているうちに「アンタイオスの足が地に着いていない限りは、怪力を発揮できない」という弱点に気づいた。そこで、ヘラクレスはアンタイオスを担ぎ上げて地に足がつかないようにしてしまった。怪力を発揮できなくなったアンタイオスは、そのままヘラクレスに締め上げられて殺されてしまったという。

 このように神話では粗野な側面が見られるアンタイオスだが、ダンテの「神曲」では巨人族の中でも比較的温厚で、神話を引き合いに出して褒めたダンテとウェルギリウスに対して好感を持ち、二人を抱えて危険地帯を運ぶ手伝いをしてくれる。

 この「神曲」の描写の一部から、佐藤有文氏は「心優しい巨人」と解説するに至ったのかもしれない。

(監修:山口敏太郎/田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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