妖怪

【実話不思議な出来事】黒猫がそこにいた

 時は、昭和50年代、季節は夏。天気は快晴!もう最高!!今は亡き友人と、千葉県我孫子市の手賀沼まで自転車ツーリングをしようということになりました。

 千葉県の野田橋近くまで来たときのこと。急に雨が降り出しました。恨めしく思い雨宿りできる場所を探すと、橋へ続く土手のちゅうふくの辺りに麺工場の倉庫がありました。
 雨宿りを請い、一時を凌ぎました。出発しようとすると、また強い雨が振りだします。空を見ると快晴は変わりません。

「???」

 道路の方を見ると相変わらずトラックや乗用車が走っています。




 漸くして出発すると、二車線ある道の真中に黒猫が車に轢かれて死んで?いました。

「チェッ、幸先悪いな」

 通り過ぎる時、それを見ないように顔を逸らし自転車を漕いでいくと、道の真中にまた別の黒猫が車に轢かれて死んで?いました。

「????」

 これもまた見ないように顔を逸らし自転車を漕いでいくと、道の真中に別の黒猫が車に轢かれて、また死んで?・・・

「????????」

 あまりの偶然の連続に気も動転してしまいましたが、ツーリングはまだ始まったばかりです。気にしないように自転車をこぎ続けましたが、やはり気になるのは当たり前です。

「帰りは見たくないな。でも少し可哀想な気もするな…」

 無事にツーリングの目的を果たし、帰り道での事。例の野田橋に差し掛かりました。

「あれからたくさんの車に轢かれて、もうぐちゃぐちゃだろうけど…」

 見たくないので、また視線を路肩に逸らしながら走りました。
 黒猫の死んでいる場所に差し掛かったと気の事です。いきなり自転車の後輪が持ち上がり、前のめりに横倒しになり、土手に投げ出されたのです。

「???????」

 後ろを走る友人はあわてて自転車を降り走り寄りました。

「大丈夫か?」
「いててて…いきなりなんだよ……」

そう言いながら、道路の方を見ると黒猫の死体などありません。代わりに電柱を支える太いワイヤーが突き出ています。ちなみにわたしのその当時の視力は2.00。わたしはふと自分の手元に視線を落としました。

 なんと例の黒猫の死体が土手に片付けられていて、こちらを見ています。

 その時、わたしはすべてを理解しました。あの時、この黒猫は生きていて、わたしに助けを求めていたに違いありません。このことに気付けなかった非礼を詫び、成仏を祈り再び帰路につきました。




 先の一件もあるため、帰路のコースを変えることにしました。すべて一方通行の道を選んだのです。路肩にはU字溝があるため、そこから1メートルほど離れて走っていた時の事。大型ダンプのエンジン音が聞こえてきます。少し左へ避けた瞬間ふと足元に嫌な感じが走ります。

「!!!!!!!」

 なんとわたしの左足首を人の手が掴んでいます。気付くとほぼ同時にU字溝に引込まれました。 

「わあぁぁぁぁ…!」

 U字溝に落ち、ブロック塀にしたたか頭を打ち付けました。

「いってぇー、バカ野郎、危ないじゃないか!」

 駆け寄る友人に文句を言うと、キョトンとしています。

「何言ってんだよ。俺は自転車に乗っているんだぜ。そんな事出来るわけないじゃん。それより大丈夫か? 平行移動したように見えたけど」

 その通り、出来るわけありません。近所の駄菓子屋でこのことを何気なく話すと、3年前ここでダンプとの接触死亡事故があったそうです。私が引き込めれた場所こそ、その事故現場だったのです。

 そしてこの一件は多分、地縛霊だと理解しました。なぜなら、わたしの左足にクッキリと手の跡がついていたからです。しかしながら、自転車が引きづられた形跡さえないことは不思議でした。

それ以来、わたしはその場所には決して近づく事はしていません。

(聞き手:山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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