【実話怪談】この道はいつか来た道

 わたしの体験した少し変わった話をしたいと思います。

 みなさんは道について考えたことがありますか?子ども心に、目の前に広がる道に、不思議な感覚を覚えたことはありませんでしたか? 

「この道…いったい、何処に続くんだろう?」「このまま、歩いていってみたいな…」

 そんな幼少のころの話です。



 これは昭和40年代、処は埼玉県は八潮市での事です。季節は夏の終わりごろでした。街を流れる中川の土手沿いには、畑や叢が広がり、自然に溢れていました。

 時刻は6時を回り、夕焼けが一際大きく見えました。疲れを知らず遊んでいた子どもたちも、次々といなくなっていきます。最後まで遊んでいたわたしも、ついに独りだけとなり、空腹と疲労でフラフラになってしまいました。 

「帰ろう……」

 そう思い、家路に急ぎ始めました。ふと、生ぬるく生臭い風がよぎりました。夏なので生暖かい風が吹くのはわかりますが、獣臭に似た風は初めてでした。

 気がつくと、さっきまで遊んでいた場所に戻っているではありませんか…。

「ぐるっと周ってきたのかな…?」

 そうは思いましたが、しばらく歩いたつもりでもやはりまたもとの場所に戻ってきてしまいます。

「またか・・・」

 そう思ったのです。思った、これには二つの意味があります。ひとつは『また元の位置に戻ってきてしまった』二つ目は『また始まったか…』という意味です。

 叢(くさむら)を見ると、こちらを見ている無数の目がありました。そこからは、どうやって家に着いたか覚えていません。

 母の呼ぶ声で目がさめました。母の話では、自宅の玄関の前で気を失った様に寝ていたいたそうです。

 その後、こんな怪異は何度か続きました。もちろん、山であった事もあります。その話は、またの機会に。




 今ではその土手も開発が進み、むかしの面影は薄くなってしまいました。きっと、わたしが体験した様な怪異は、時とともにどこかに消えてしまったかも知れません。

 神隠しにも似た不思議な体験でしたが、今でもあの時と似た風が吹くと、ハッとして周りを見まわしてしまいます。でも、心のどこかで「また、あの体験をしてみたい」と思っているのかもしれないですね・・・。

 みなさんの処にもいつ吹くかも知れませんよ。

(聞き手:山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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