【実話怪談】影の友人

 当時俺は学生で、学校の寮に入ってました。これからお話する金縛りの体験とは無関係かもしれませんが、ちょうどその日、仲のいいA君とこんな話をしていました。

「あいつ、一年経っても現れんなぁ」

 あいつというのは、一年前、野球部の自主トレを終え、寮に帰る途中に急性心不全で亡くなった、H君のことです。
 テスト期間中で、H君の所属する野球部も含め、部活動は休みだったんですが、真面目なH君は先輩に言われた、テスト期間中も自主トレをするようにという言葉を忠実に守り、グランドをランニングしていたのです。

 その時、俺は寮で「そろそろ風呂にでも行こうか」などと考えて、その支度をしていました。寮のスピーカーから、

『K学科2年のH君が寮へ帰る途中倒れ、病院へ運ばれました』

という放送が流れ、救急病院で亡くなったことを聞いたのは風呂に入ってからのことでした。

 冒頭の「あいつ、一年経っても……」というのは、それから一年の月日が流れ、一回忌を終えて一週間経ったころのA君との会話です。




 A君はもともと霊感が強いらしく、寮に入ってから何度も金縛りを経験していたようです。
 A君はH君が現れるなら必ず自分のところだ、と思っていたらしいのですが、H君が現れないので「成仏したんだなぁ」などと話をして、その日は各々の部屋へ戻りました。

 そんな話をしていたことも忘れ、ベッドに入り深い眠りにつきました。
 早朝(明るく感じられたからそう思う)、意識が戻り、目を開けようとしたその瞬間、体が動かないことに気がつきました。瞼はうっすらとしか開けられず、体は凍りついたかのように動きません。

「う、うぅぅぅ……」

 助けを呼ぼうにもうめき声にしかなりません。

「これが金縛りなんだ」

 少し冷静さを取り戻し状況を理解したとき、ある影の存在に気づきました。

 夜が明けて明るくなっていて、うっすらと開けた瞼からその存在を知ったのです。その影は、二人存在しました。

 一人は俺の腹の上に馬乗りになって、俺の両手首をベッドに押付け、身動きが取れないようにしていました。
 そして、もう一人は……、俺の枕元のすぐ左に立ち、前かがみになって俺の寝顔を覗き込んでいたのです。

「うぅ、うぅぅ」

 必死で助けを呼ぼうともがきましたが、やはりうめき声にしかなりません。そうこうしているうち、また眠ってしまいました。
 朝の起床の放送が流れ、やっと目が覚め、朝のラジオ体操のときにA君に 今朝の出来事を話しました。

「なんで、俺のとこに来んのじゃ!」

 A君はそう言って悔しがってましたが、俺にとっては今まで経験したことのない、不思議なそして恐ろしい体験でした。




 しかし、よくよく考えてみると、それがH君の仕業なら一人のはずです。A君とも話しましたが、やはりそれはH君じゃなかったのでは、という結論に達しました。
 H君が出てくるなら、そんな出方はしないはずですし。

 その後半年の間、その部屋で過ごしましたが二度とそんなことは起きませんでした。
 A君との話では「H君とは関係ない」ということになりましたが、俺の中でなにか釈然としないものが残っているのは確かです。

 最後に、若くしてその命を落としたH君のご冥福をお祈りし、この話の結びとしたいと思います。

※Nさんによる投稿

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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